こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベラミ 愛を弄ぶ男 

otello2013-02-22

ベラミ 愛を弄ぶ男 BEL AMI

監督 デクラン・ドネラン/ニック・オームロッド
出演 ロバート・パティンソン/ クリスティーナ・リッチ/ユマ・サーマン/クリスティン・スコット・トーマス/ コルム・ミーニイ
ナンバー 318
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

屋根裏の小さな部屋、粗末なベッド、固くなったパン。労働者の低賃金ではキャバレーでもいちばん安いビールしか飲めず、社会の不平等と人生の不運を恨むばかり。そんな青年がふと手にしたチャンスをもとに出世の階段を駆け上っていく。ところが彼が用いたのは商才でも人脈でもなく、女心を弄ぶ才能。物語は19世紀末のパリ、社交に明け暮れる上流階級に紛れこんだ主人公の野望を描く。世の中を動かしているのは政治家や実業家ではなく女という言葉に、人の世の浅はかさがにじみ出ていた。夫も妻も愛人を持ち、それぞれが気づいているのかいないのか、入り乱れた男女関係がいかにも爛熟の世紀末の雰囲気を醸し出す。

貧しさにあえいでいたジョルジュは戦友で新聞記者のシャルルと再会、新聞社で働き始める。教養豊かなシャルルの妻・マドレーヌのアドバイスで書いた戦記は好評を得、人妻のクロチルドと付き合い始める。

その後、クロチルドと別れ新聞社もクビになったジョルジュは、新聞社社長夫人・ヴィルジニに懇願して新聞社に復帰する。その間、マドレーヌと彼女の愛人の謎めいた関係をいぶかしみ、未亡人になった彼女につけこんだりと忙しいジョルジュ。有力者の妻たちを味方につけることでのし上がっていく過程は、結婚制度自体が否定されているようで、たとえ配偶者がいようとも、いい女は次々と男に口説かれ、いい男は次々と女を落としていく。男女とも貞淑観念はなく、性的な魅力がカネと権力を呼び寄せるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

マドレーヌの口述を書き写していくだけのジョルジュには文才はないが、それでも新聞記者として通用しているのは「女の世界」に情報網を持っているからなのだが、このあたりは少し出来過ぎた展開にも思える。かつて憎んだはずの社会格差に対し、セックスアピールを武器に復讐するジョルジュの生き方は、希望をなくした21世紀の若者へのメッセージなのだろうか。底辺から這い上がるにはカネ持ちの子女を籠絡するしかないという。。。

オススメ度 ★★*

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