こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

攻殻機動隊ARISE

otello2013-06-22

攻殻機動隊ARISE

監督 黄瀬和哉
出演
ナンバー 117
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

脳だけは人間、体はすべて人工物。ヒロインが機械との違いを定義づけるのがゴーストと呼ばれる“魂”を持つこと。ところが、それが宿る脳でさえも外部から侵入され、操作されているとすれば、彼女の人格はいったい誰のものなのか。積み重ねられた記憶が、人の性格や意思決定・行動原理となるのに、巧妙に仕組まれた偽物だったら……。物語は尊敬する上官の死に疑惑を覚えた秘密機関の女サイボーグが、裏切りと欺瞞、個人と組織の軋轢を乗り越え真相にたどり着くまでを追う。己の正義と自分の属する組織の正義が相反するとき、どう対処すべきか。真実を知りたい、だが耐え難い結果も予測できる。そんな彼女の葛藤と活躍をリアルかつスタイリッシュなアニメで描く。

殺されたマムロ中佐からのメッセージを受け取った草薙素子は、マムロの収賄疑惑を聞かされる。さらに調査を進めるうちに、素子の前には公安や戦闘サイボーグなど様々な障害が立ちはだかる。

ゼロ歳児の時に全身義体化した素子にとって、肉親の存在はどこまで本物なのか。確かにフォトフレームでは家族らしき大人と子供時代の素子が笑顔を作っている。一方で幻覚に襲われ、自我を喪失していく。それでも抜群の戦闘能力とボロボロにされても痛みを感じないボディゆえに、メンタルの弱さは許されない。しかし、どこかで慰めや愛を求めている。他人に見せられない思いこそ、素子の属性がまだ人間であるのを証明しているようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

捜査の途中、様々なサイボーグや一部義体化した人間と出会う素子。実際に格闘する、もしくは共闘して彼らのポテンシャルを見極めていく。その過程で、自らの脳を直接ネットにアクセスさせる危険性や、高度に電脳化された世界におけるサイボーグの長所と短所を浮き彫りにしていく。なにより、作り物の肉体で生きてきた素子は、感覚から得られる快感や苦痛の経験はない。疑問を抱きながらもその運命を受け入れるほかない素子の心が哀しかった。

オススメ度 ★★*

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