こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミッドナイト・ガイズ

otello2013-09-14

ミッドナイト・ガイズ STAND UP GUYS

監督 フィッシャー・スティーブンス
出演 アル・パチーノ/クリストファー・ウォーケン/アラン・アーキン/ジュリアナ・マーグリーズ/ルーシー・パンチ
ナンバー 224
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

面倒を見てくれる家族もおらず、頼りになるのは古い親友だけ。彼とも1日しか一緒にいられない。残されたわずかな時間、男たちはハメをはずし、他人を救い、けじめをつけようとする。もはや先は短い老人となった2人の元ギャング、引退した身ながらも完全に足を洗っていない。法に縛られない生き方を選んだはずが掟に縛られるという皮肉。そんな状況下で、彼らは自由とは命がけで自分の意志を貫く強さだと訴える。まだまだ元気いっぱいに暴れまわるアル・パシーノと枯れた味わいのクリストファー・ウォーケンの対照的なコンビが、時にユーモアを交えつつ男の哀愁を肩で表現する。

28年の服役を終えて出所したヴァルを出迎えたのは旧友のドクひとり。再会を喜び早速娼館に繰り出し、ヴァルは大いに楽しむ。しかし、ドクは組織のボスからヴァルを殺すように命じられていた。

失われた時間を埋めようと“パーティ”に酔いしれるヴァル。バイアグラを過剰摂取して“硬直”したまま救急搬送されるなど失敗もするが、ドクが隙をうかがっているのにも気づいている。一方のドクはたびたびヴァルに銃口を向けるが、引き金を引けない。長い付き合いだからこそ相手の気持ちが分かるし、立場も理解している。きっと若いころは修羅場を何度も共にくぐり抜けてきたのだろう、2人のお互いを思いやる気遣いは“男の友情”を象徴していた。そして、2人はもう一人の仲間・ハーシュをケアハウスから連れ出し、大昔に経験したアドレナリン大量噴出の興奮に我を忘れる。それは己ではなく誰かのための暴走、その過程で希薄になっていた知人との絆も復活させていくのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

愛する者や信頼する者、自らの誇りといった、命を捨ててでも守り抜かなければならないもののために、彼らは決意を固める。もう死など恐れない、アウトローの心意気を取り戻した2人の背中は、“いかに死ぬか”が“いかに生きたか”の証になることを教えてくれる。朝焼けの美しさに劣らぬ人生の輝きに満ちた作品だった。

オススメ度 ★★★★

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