イントゥ・ザ・ストーム Into the Storm
監督 スティーブン・クォーレ
出演 リチャード・アーミテージ/サラ・ウェイン・キャリーズ/アリシア・デブナム・ケアリー/アーレン・エスカーペタ
ナンバー 135
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
はるか上空で蠢く鉛色の雲から一本の筋が地面方向に伸びると、周囲の雲が渦を巻きながら集まってくる。太くなった雲の筋は竜巻に成長し、大きくくねりながら地上にあるあらゆるモノを蹂躙し、絨毯爆撃を受けたような瓦礫の山だけを後に残す。物語は“竜巻の目”を撮影することに人生を賭ける男を軸に、極限状態に直面した人々の愛と勇気を描く。だがそれはほんのつけ足し、映画はあくまで想像を絶する竜巻の風圧に焦点を当てる。登場人物が吹き飛ばされまいと固定物にしがみつくシーンは、思わず客席の肘掛を握りしめてしまうほどの臨場感を体験させてくれる。
竜巻を追って町を転々とするピートたち竜巻ハンターは、理想的な気象条件に遭遇する。卒業式の最中だった付近の高校では教頭のゲイルが生徒を校舎に避難させるが、長男・ドニーの不在に気づく。
強大な上昇気流に、自家用車やトラック、家の屋根、果ては旅客機までが吸い上げられ、空中でダンスを舞う。さらに捻じ曲げられた鉄塔から延びる電線や、割れたガラス片、ブロックのかけらは凶器となって避難者に降りかかる。ところが、わずか100メートル先まで竜巻が迫っても、カメラマンはレンズを向け続け、ピートは改造装甲車で竜巻を待ち受ける。ゲイルや女性学者といった“子を持つ親”は生存第一に行動するのに対し、竜巻ハンターたちは命知らずのガッツで名誉欲と懐を満たそうとするのだ。また、動画投稿マニア2人組もその無知と無鉄砲さで竜巻に突入していく。ジャーナリズムとは次元が違う、決定的瞬間のより過激な映像を公開するのが成功への近道となった“YuoTube世代”の熱意と好奇心が、いかにも現代的だ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて町の中心部を襲った竜巻は引火したガソリンを巻き上げ、天に向かって聳え立つ火柱となる。そして4本が合体したメガ竜巻と対峙したピートは、ついに念願を叶える。地獄のごとき下界とは対照的な心地よさげな雲海と穏やかな夕焼け、彼が目にした光景が人智を超越した大自然の脅威と美しさを象徴していた。
オススメ度 ★★★