こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テロ,ライブ

otello2014-06-16

テロ,ライブ

監督 キム・ビョンウ
出演 ハ・ジョンウ/イ・ギョンヨン/チョン・ヘジン/イ・デビッド/キム・ホンパ
ナンバー 136
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

声だけの脅迫者、頭の中で駆け巡る計算と打算、孤立した人質。爆弾犯との交渉窓口に指名されたキャスターは返り咲きのチャンスとほくそえみ、視聴率欲しさに上司も背中を押す。だが、犯人の要求は彼らの権限をはるかに越えたもの。責任の所在が明らかにされないまま市民の命が危険にさらされていく。物語は高度経済成長の人柱にされた名もなき労働者の無念を晴らそうという男が街に爆弾を仕掛け、TVを利用して政府と駆け引きする過程を描く。刻々と進む時間、思い通りにならない焦燥、予期せぬ裏切りと取引…、狭い空間で繰り広げられる対話劇のなかで次第にエゴをムキ出しにしていくTVマンたちが滑稽だ。

ソウルのラジオDJ・ヨンファの元に爆破予告の電話が入り、直後に橋が炎に包まれる。ヨンファはノギュと名乗る実行犯との会話を急遽TVで生放送、番組は驚異的な視聴率に跳ね上がる。ノギュは30年前に起きた事故の謝罪を大統領に求める。

警察の3歩先を読むノギュはスタジオのイヤホンにも爆発物を仕込みヨンファを縛りづける。政府の対テロ班や警察に足跡を追われてもなかなか尻尾をつかませない。崩落しかかった橋に取り残された人々の救助もままならないなか、ノギュは更なる爆弾に点火すると脅す。ノギュと、テロリストとは交渉しない方針の政府の板挟みになったヨンファは、自らの軽率さを悔やむがもう後戻りできない。クローズアップの多用とハンディカメラの細かな揺れがヨンファの苛立ちを代弁し、ギリギリの緊張感で神経戦を迫られる彼の苦悩と葛藤をリアルに再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて通話記録からノギュの居所を絞り込んだ警察はアジトに突入する。一方で、政府と上司の命令を聞かず、独断で大統領が謝罪すると約束してしまったヨンファは、収賄疑惑を暴露されてしまう。この国の有力者は何もかも信用できない、むしろ正しいのはノギュのほうではないかとさえ感じ始めるヨンファ。彼らの姿に、持つ者と持たざる者のあまりにも開いてしまった韓国社会の“格差”の現実が凝縮されていた。

オススメ度 ★★★

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