こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ティーンスピリット

f:id:otello:20191207113619j:plain

学校では教室の隅にたたずみ、家では黙々と農作業を手伝う。私らしくいられるのはナイトクラブで歌っている時だけ。さえないオッサンしかきちんと聞いてくれないけれど……。物語は離島に住む少女がスターを目指す過程を描く。聖歌隊で歌えという母の目を盗んで夜な夜なマイクを前にするが、ガラガラの客席が空しく見える。酔漢に絡まれそうにもなった。そんな時声をかけてくれたのは東欧から移住してきた元オペラ歌手。みすぼらしい格好だが耳と声は本物、発声法すら身につけていなかったヒロインは彼の指導でみるみる実力をつける。目標があってもなかなか走り出す勇気が出ない。それでも背中を押されると違った自分が見えてくる。まだ心の声が明確な形を成さない彼女をエル・ファニングが繊細に演じる。

英国の小さな島で母と2人で暮らすヴァイオレットは、彼女の歌を聞いたヴラドと名乗る男に褒められ、オーディション番組の2二次予選に必要な保護者兼マネージャーになってもらう。

ヴラドはセルビアでは有名だったらしく同郷の若者から尊敬されている。ヴィオレットはヴラドに歌唱の基礎から厳しく鍛え直されて審査員の前に立つ。このころには彼女の出場を知った音楽仲間も注目し始めている。ヴラドをマネージャーとして認めた母は、マネジメント料を大幅に値切るがめつい一面を見せるなど、移民が信じられるのはカネのみという英国社会の現実をのぞかせる。一方のヴラドもヴァイオレットを育てることで我が子に託せなかった夢をかなえようとする。だれも頼らずだれにも頼られずに生きてきた彼らがお互いに相手を必要としている。親子以上に年齢が離れていても友情は成立すると2人の信頼関係は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

繰り上げで二次審査を通過したヴァイオレットはロンドンでの決勝戦に臨む。田舎ののど自慢とは違いTV中継が入るなど本格的、優勝者にはメジャーデビューが約束されている。だがそこに待ち受けるのは甘い罠。ヴァイオレットの迷いは、臆病さと正直さを象徴していた。

監督  マックス・ミンゲラ
出演  エル・ファニング/レベッカ・ホール/ズラッコ・ブリッチ/アグニェシュカ・グロホウスカ
ナンバー  281
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://teenspirit.jp/