こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レイニーデイ・イン・ニューヨーク

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裕福な家庭に生まれたおかげで気ままなキャンパスライフを謳歌している。恋人との一泊旅行は一流ホテルにチェックイン。深い教養があり彼女には一目置かれている。賭けポーカーでは強気に出て大儲け、娼婦に5000ドル払う。子供のころからカーライルのバーに入り浸っていたという主人公のバックグラウンドはNYの富裕層を象徴している。物語は、名門大学生カップルが体験する奇妙なすれ違いを描く。ジャーナリスト志望の恋人は有名監督のインタビューに舞い上がっている。約束をすっぽかされた青年はひとり故郷の街をぶらつきつつも旧知の人々との会話を楽しむ。よそ者ではない、生粋のマンハッタンボーイ。そんな、洗練された習慣に裏打ちされた自然なふるまいが、ウディ・アレンの理想とするニューヨーカーを体現していた。

アシュレーとのランチをドタキャンされたギャツビーは元カノの妹・チャンと再会、自主映画に飛び入り出演する。一方、アシュレーは失踪した監督を探すうちに様々な事件に巻き込まれる。

まるで20世紀末のアレン作品のように、登場人物はひっきりなしにしゃべる。他愛のない内容ながら、ユーモアと皮肉が詰まったセリフの数々はピンポイントで笑いのツボを押す。特に、セレーナ・ゴメス扮するチャンの憎たらしいまでの自信に満ち時に他人を見下した態度は、常に勝ち組に身を置き怖いもの知らずで育ってきた階級の子女の典型だった。格差や貧困・黒人差別問題などを彼らが口にしても嘘くさいだけ、ならばあえて触れない。金持ちの日常は、夢の国のおとぎ話のようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後アシュレーは映画スターに誘われるままに車に乗り、新恋人と報道される。傷ついたギャツビーは娼婦を連れて母が主催するパーティに出席する。俗物の塊で苦手にしてきた母は、そこでギャツビーに衝撃の告白をする。出自は問われない、大金を稼いだ実績とこれからも儲けそうだという期待値があればだれでもスノッブな “上流ごっこ” に参加できる。その薄っぺらさがNY人種の真実をついていた。

監督  ウディ・アレン
出演  ティモシー・シャラメ/エル・ファニング/セレーナ・ゴメス/ジュード・ロウ/ディエゴ・ルナ/リーヴ・シュレイバー
ナンバー  100
オススメ度  ★★★*


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