こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フライト・オブ・フェニックス

otello2005-04-13

フライト・オブ・フェニックス FLIGHT OF THE PHEOENIX


ポイント ★★
DATE 05/4/9
THEATER ユナイテッドシネマとしまえん
監督 ジョン・ムーア
ナンバー 44
出演 デニス・クエイド/ジョヴァンニ・リビシ/タイリース・ギブソン/ミランダ・オットー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


極限状態におけるサバイバルでは、エゴがむき出しになりチームワークを乱す人間が必ず現れる。そうした中で、目立たなかったメンバーがいつしか冷静な思考と的確な判断で強力なリーダーシップを取るようになったり、頼りにしていたリーダーが使えなかったりと、本来の人間性が赤裸々に浮き彫りにされるのがこうした閉鎖状態における人間ドラマの定石。しかし、この作品では登場人物に対する掘り下げ方が浅薄で方向性に乏しく、中途半端な感じは否めない。絶望的な状況で希望を見出していくのか、エゴがぶつかり合ってドツボにはまっていくのか。表現上の斬新さよりも物語の骨格をきちんと形成しておくべきだった。


砂漠の真ん中に不時着した輸送機の機長・フランクは、捜索隊を待つ間生存者たちに少ない食料と水で生き残るために節約を命じる。しかし、捜索隊に見放されたことを知ったとき、謎の男・エリオットは輸送機の使える部品を組み立てて新たに飛行機を作ることを提案する。そして、グループの指揮権はいつしかフランクからエリオットに移っていく。


機上では絶対的な決定権を持つフランクも地上ではただの人。彼の無策ぶりがやがてグループをエリオットになびかせるのだが、エリオットのキャラもまたよくわからない。出自が不明なのはいいとして、彼が飛行機の組み立てを提案した以上、もう少し運命共同体的な発想があってしかるべきだ。どうせなら、飛行機には全員乗れず、何人かを置いてきぼりにしなければならないようなシチュエーションを作っておけばもっと緊迫感が持続したはずだ。


砂嵐に巻き込まれた輸送機がコントロールを失い、迷走しながら不時着するシーンはとても迫力がある。プロペラがはずれ機体に突き刺さるなど、飛行機の案外脆い面も描かれていて緊迫感を盛り上げる。しかし、手に汗を握るのはここまで。やはり、人間の心理をきちんと描写しなければサバイバル物は面白くない。


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