こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE GREY 凍える太陽

otello2012-08-20

THE GREY 凍える太陽

オススメ度 ★★★*
監督 ジョー・カーナハン
出演 リーアム・ニーソン/ダーモット・マローニー/ジェームズ・バッジ・デール/フランク・グリロ/ダラス・ロバーツ/ジョー・アンダーソン/ノンソー・アノジー
ナンバー 206
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

暗闇にかざした松明が獣の目に反射する。一対また一対と光が増し、気が付くとたき火の周りは十数頭のオオカミに囲まれている。低いうなりと咆哮、獲物を徐々に追い詰めて仕留める彼らの習性と、狩られる立場になった人間たちの恐怖がリアルに伝わるシーンだった。映画は航空機事故の生き残りが一人また一人オオカミに襲われて落命していく過程を描く。凍てつく大地、雪深い森、迫りくる嵐といった状況でオオカミの追跡と襲撃をかわす彼らのサバイバル劇は、大自然の中で生きることはそのまま戦いに勝ち続けることであると強烈に印象付ける。極限状態では、死という運命を恐れず、受け入れる準備をしている者だけが冷静な判断を下せるのだ。

アラスカの奥地で旅客機が氷雪原に墜落、生存者は7人しかいない。だがそこはオオカミの縄張り、その生態に詳しいオットウェイをリーダーにして彼らは脱出を図る。身を守る武器はなく、少ない食料と燃料、どこまでも付きまとうオオカミの群れに犠牲者が増えていく。

執念深く、慎重に、オットウェイたちの消耗を辛抱強く待ち、わずかな油断も見逃さない。時に堂々と姿を見せ威嚇するなど、オオカミは明確な意図があっていたぶっているかのよう。オオカミの狙撃を生業にしてきたオットウェイにとっては、これはオオカミの復讐としか思えない。もはや希望などという甘い夢を口にする者はいない。目の前の危機を乗り越えても先には更なる危険が待っているとわかっている。それでも決して心が折れないオットウェイたちに、真の勇気とはあきらめない精神力であると教えられた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“最強の敵を倒せたら、その日に死んでも悔いはない”。やがて最後の一人となったオットウェイは、彼の父が残した詩を思い出してオオカミとの決戦に臨む。野生の脅威の中で人はどれだけ意志を強く保てるか、下手な心理ゲームやホラー仕立てにせず、あくまで人間対オオカミのシンプルな構図にしたところに緊迫感が生まれ、好感が持てた。

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