こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

16ブロック

otello2006-10-20

16ブロック 16BLOCKS


ポイント ★★*
DATE 06/10/14
THEATER 109シネマズ港北
監督 リチャード・ドナー
ナンバー 177
出演 ブルース・ウィリス/モス・デフ/デヴィッド・モース/ジェナ・スターン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


朝から酒ビンを手放せず、目もうつろ。深く刻まれたシワに胡麻塩頭、上半身の筋肉は落ち腹はたるんでいる。年齢とともに完全にやる気もうせた刑事をブルース・ウィリスに演じさせたところがミスマッチ。かつての肉体派俳優が体力も良心も衰弱してしまった男に扮することで、腐敗まみれの組織がいかに個人を殺してしまうかをプロローグで印象付ける。銃の扱いやトラップのかけ方を見る限り、かつては切れる刑事だったことをうかがわせるキャラクター。元相棒に出世で差をつけられた原因を言外ににおわせる演出が粋だ。


夜勤明けのジャックはチンピラのエディを裁判所まで護送する任務を押し付けられる。その途中、車に乗せたエディが襲撃を受け、ジャックとエディは車を捨てて逃げる。追っ手はエディの証言で破滅するかもしれない6人の刑事。ジャックとエディは人ごみと迷路のような建物を利用して裁判所を目指す。


「今度こそ改心してケーキ屋を始める」というエディに「人は変わらない」と突き放すジャック。ジャックが刑事としての正義に目覚めたとき、エディもまたせっかくジャックに助けられた命を危険にさらしてジャックを救おうとする。このあたりの、男と男の信頼にこたえようとするシーンはいかにも骨太な演出。派手なアクションもバスを暴走させる程度にとどめ、多弁な黒人エディと寡黙な白人ジャックというコメディのようなキャラ分けから一歩進んで人間の本質に迫るドラマに仕上げる手腕はさすがベテランのリチャード・ドナー監督だ。


しかし、バスから脱出するシーンや救急車を乗り換えるシーンが唐突。そこでどういうトリックを使って追っ手をまいたのかが描かれていなくては、単なるご都合主義に過ぎないではないか。その後の悪徳刑事との対決もどういうお膳立てなのか不明だ。せっかく途中までドラマとアクションがバランスよく融合したスピーディな作品だったのに、2人がバスを降りたとたんに失速してしまった。


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