こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サイドカーに犬

otello2007-06-26

サイドカーに犬


ポイント ★★*
DATE 07/4/5
THEATER メディアボックス
監督 根岸吉太郎
ナンバー 66
出演 竹内結子/吉田新太/松本花奈/ミムラ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


颯爽とサイクリング車に乗ってサバサバした言葉を遣い、奔放に生きているようで他人の面倒見もよい。子供の目から見れば自由で素敵な大人の女性なのだが、ヒロインのがかもし出す雰囲気は、本当はまったく違う性格なのに、子供の前では明るく振舞おうとしているようにも見える。だが物語が進むにつれ、やはりミスキャストだったと思わざるを得ない。いかにパンツ姿ですらりとした足を強調しても、長い髪としっとりとしたまなざしが、女性的な部分をさらけ出す。


母親が家出をした薫の家に、ヨーコさんという若い女が訪ねてくる。中古車販売業をする父親の愛人らしいのだが、そんなことはおくびにも出さず食事の用意をしてくれる。薫とヨーコさんは仲良くなるが、ヨーコさんが父親の事業に口を挟んだために家に来ることを禁止される。


自分を一人前に扱ってくれる大人は、ひと夏の間でも子供を成長させる。おそらく母親に口うるさくしつけられていた薫は、些事にこだわらず誰とも対等に接し、すぐに他人の心に入り込んでいくヨーコさんは初めて会うタイプの大人。自由だけれど怠惰な父とは違って、自由な人生を積極的に楽しむヨーコさんの姿は、几帳面だった薫の性格を少しづつ変えていく。しかし、それを竹内結子が演じると、どこか無理しているような違和感が残るのだ。


サイドカーに乗った犬は、飼い主の顔色を伺うのではなく、凛として前を見つめている。誰かに頼らなければ生きていけないけれど、依存するばかりでなく共生する。まさに父とヨーコさんの関係であり、父と薫の関係でもある。父に捨てられたヨーコさんはどうなったのだろう。今度は一人で生きていけるようになったのだろうか。20年後、ヨーコさんの住んでいたアパートを薫が訪ねると、すでにそこはコインパーキングになっているが、ヨーコさんは今も自由でいるという確信は揺るがない。ただ、生きていくうえで自分を抑えすぎないという、薫の人生に及ぼしたヨーコさんの影響をもっと具体的なエピソードで示して欲しかった。


↓メルマガ登録はこちらから↓