こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プルミエール

otello2008-04-24

プルミエール


ポイント ★★*
DATE 08/1/23
THEATER 映画美学校
監督 ジル・ド・メストル
ナンバー 19
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


地球上の多種多様な民族国籍の妊婦たちがさまざまな方法で赤ちゃんを産む。進んだ医療に頼るだけではなく、全身にペイントする立ち産のアマゾンの原住民、布で囲っただけの砂の上で出産するアフリカの遊牧民、プールの中で夫婦手を取り合う北米のフリーバース、妊婦のコミュニティで陣痛が来るまで肉体労働する日本人、病院で帝王切開されるシベリアの遊牧民、貧しさから産婆頼りのインドの下層民、ヤギの生き血を飲むマサイ族。誕生は決して生命の奇跡ではなく、その瞬間をことさらドラマチックに強調するような演出はない。あくまで誕生は死と同じくありふれた日常風景であるというスタンスだ。


妊婦たちはその出産法を選んだ理由を淡々と語る。それは女である以上、当然通る道。確かに一生のうちにそう何回も体験することではないが、特別なことでもない。映画はさまざまな出産の方法があることを紹介し、並列する。最先端の病院で産むのも伝統的な粗末な小屋で産むのも、生まれてくるのは同じ命。すべての命は平等であるという思想はすばらしい。


特にイルカの発する超音波が胎児を癒すという新説には、疑わしくもそんな気にさせられる。イルカが泳ぐプールに入り、イルカがおなかの中の赤ちゃんに語りかけるかのような声を出す。さらにへその緒がついたままの赤ちゃんに寄り添う。子宮の羊水からプールの海水、そして初めて口にする空気、赤ちゃんの気持など分かるわけはないのだがイルカとは心を通わせているような錯覚に襲われる。


ただ、編集の仕方が非常に散文的で余りにも映像を細切れにしすぎ混乱する。どうせなら登場する妊婦一人ひとりにきちんとインタビューして、子を産むこと、母親になるというというのはどういうことかをきちんと語らせて欲しかった。また、皆既日食と出産を強引に関連付けるのは科学的な根拠があるのだろうか。出産を淡々と描く割には占星術を信じているかのような姿勢はいかがなものだろうか。。。


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