こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハンコック 

otello2008-08-30

ハンコック HANCOCK


ポイント ★★★*
DATE 08/7/31
THEATER ソニー
監督 ピーター・バーグ
ナンバー 185
出演 ウィル・スミス/シャーリーズ・セロン/ジェイソン・ベイトマン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


空を飛べば標識やビルを壊し、着地すれば道路に穴をあける。凶悪犯を捕まえたり、困っている人を助けても、周囲から迷惑者とし扱われている。超人能力を持ちながらその力を持て余し、社会のために使っているのに誰からも理解されない。そんな、他人と違うがゆえの孤独にさいなまれる主人公の感情がリアルで切ない。パワーはどうして得たのか、なぜ肉体が老化しないのか、彼の自分探しと、人間らしい気持ちを取り戻す過程を通じて、心を開けば決してひとりではないと教えてくれる。


ハンコックは逃走中の武装強盗を捕まえるが、街の被害は甚大でブーイング。ある日、レイという広告マンを助け、「好かれるスーパーヒーロー」になるためのレッスンを受ける。まず初めに法を遵守する姿勢を見せるために服役すると、街の犯罪発生率が上がり、ハンコックは警察署長から直々に援助要請を受ける。


80年前に記憶喪失のまま見つかって以降、誰も知り合いが名乗り出ないことに「嫌われ者だった」と思い込んでいるハンコック。当時は力を正しく使っていたはずが、やがて自信が持てなくなったのだろう。そんな己に価値はあるのかと自問し、一方で死ねない体である事実が無謀な行為に走らせる。ひねくれて自暴自棄になりながらも正義感は捨てきれないという、複雑な感情がうまく描かれている。


レイの妻・メアリーとの関係が深まるにつれ、ハンコックの過去も明らかになっていく。それは彼女への想いが強いほどパワーが落ちるという忌まわしい運命。愛のために死ぬか、人類の平和を守るために愛を捨てるか。すべての真実を知ったハンコックはメアリーの元を去る。神と崇められるほどの力に対して、愛はすなわち死を意味するのだ。その宿命を背負ったまま3000年もの時を過ごしてきた彼らに、安らぎの時間はあるのだろうか。スーパーヒーローであり続けることを選んだと示唆するラストは、一見ハッピーエンドのようだが、ハンコックにとっては余りにも残酷ではないだろうか。。。


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