こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディファイアンス

otello2008-12-21

ディファイアンス Defiance


ポイント ★★★
DATE 08/12/17
THEATER 東宝東和
監督 エドワード・ズウィック
ナンバー 306
出演 ダニエル・クレイグ/リーヴ・シュレイバー/ジェイミー・ベル/アレクサ・ダヴァロス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


座して死を待つより銃を手にする道を選んだ男。その戦いはやがて敵を倒すよりもひとりでも多くの同胞の命を救い、生き延びることに変わっていく。兵士としての優秀さよりも、女子ども老人もいる集団をまとめていく能力が必要とされる。弱きものを守り、夜露をしのぐ小屋を作り、食料を調達する。もちろん敵とも闘わなければならない。普通の男が窮地にある仲間を救ううちに、リーダーとしての使命に目覚めていく過程での葛藤をリアリティたっぷりに再現する。


1941年、ドイツ軍占領下のベラルーシでもユダヤ人狩りが始まる。トゥヴィアとズシュ、アザエル兄弟は両親を殺されて森に逃げ込んでいたが、そこで数人のユダヤ人グループと合流する。その人数は膨れ上がりコミュニティを形成するまでになる。しかし、あくまで武力での報復を主張するズシュは赤軍配下に走り、トゥヴィアと袂を分かつ。


さらにトゥヴィアはゲットーのユダヤ人まで救出するなど、森の人口は数百人までに膨張する。もはや戦う集団ではなくひとつの村社会。当然、厳冬期になると食糧不足からいさかいが耐えなくなる。雪に閉ざされた森の中で飢え死にしたものはいなかったのだろうか。自らも病気になりながらも常に先頭に立つトゥヴィアは愛馬を処分することでなんとか集団の糊口をしのぐ。トゥヴィアは自己の責任に押しつぶされそうになり人間らしい弱さをみせるあたり、単なるヒーローものとは一線を画した重みがある。


春になり、ドイツ軍攻勢の情報を得たトゥヴィアたちは森を出て決死の行進で湿地帯を抜ける。そこでドイツ戦車の砲撃にあうが、ズシュの加勢で救われる。このあたりの戦闘シーンの描写も非常に遠慮がちで、トゥヴィアたちの主観よりも第三者の目で見ているような距離感がある。あくまで、トゥヴィアの戦場での行動は客観的に、ユダヤ人グループ内での苦悩は等身大に描く。あえて神格化しないのは、トゥヴィアたちがいまだ世間にはあまり知られていない存在だからだろうか。


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