こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ふたつの名前を持つ少年

otello2015-08-28

ふたつの名前を持つ少年 LAUF JUNGE LAUF

監督 ペペ・ダンカート
出演 アンジェイ・カクツ/カミル・カクツ/ジャネット・ハイン/ライナー・ボック/エリザベス・デューダ/イタイ・ティラン
ナンバー 200
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

着の身着のままの脱出、食料は農家から盗み森で野宿する。ひとりぼっちで凍えていた少年は、そこで初めて赤の他人の親切を知る。本気で心配してくれる大人がいる、そう考えるだけで彼は人間らしい心を取り戻し、愛想笑いで施しを乞い労働で食事にありつこうとする。物語は第二次大戦中ドイツ占領下のポーランド、ゲットーから脱走しナチスの目をごまかしながら生き抜いたユダヤ人少年のサバイバルを追う。カトリック信者を装ってもユダヤ人とばれそうになると潜伏場所を変えなければならない。そして続く放浪と物乞いの日々。ほとんど門前払いされ、時に騙されたこともある。だからこそ善意と出会ったときの喜びは大きい。命の危険を冒してまで主人公を助ける勇気を普通の人々から引き出した、彼の笑顔がまぶしい。

ユダヤ人地区から逃げ出したスルリックは浮浪児のグループと合流するが、ナチスの捜索ではぐれてしまう。冬になり、行き倒れていたところをパルチザンの妻・マグダに看護され、ユレクというポーランド名を名乗る。

ユレクはカトリックの習慣やお祈りを覚え、偽の身の上話でポーランド人孤児になりきろうとする。それでも割礼痕は隠しきれず、追っ手が近づくともはやそこには留まれない。その間、ユレクをナチスに売る老夫婦がいたり、ユレクの正体を知ってもなお彼の知恵と行動力を認めて手出しをしないSS将校がいたり、大けがをしたユレクの手術を拒む医師もいれば率先して治療する医師もいる。ドイツ軍人にもポーランド市民にも善悪二元論では語れない複雑な思いが交差し、安堵と恐怖の間でユレクの運命を翻弄する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてソ連軍の侵攻でユダヤ人は解放されユレクの逃亡生活も終わる。だが、行くあてもなく農家の世話になるしかない。生死ギリギリの狭間で徐々に感情を失っていくユレクの、決してあきらめずに父との約束を守ろうとする姿は、精神的な支えが人を強くすると教えてくれる。ただ、ユレクの髪型がいつも整っているのが不自然だったが。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓