ポイント ★★
DATE 09/3/20
THEATER WMKH
監督 ペイトン・リード
ナンバー 67
出演 ジム・キャリー/ズーイー・デシャネル/ブラッドリー・クーパー/リス・ダービー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
決断を迫られたときは必ず "yes" と言ってみる。するとそれまでの日常が嘘だったかのように物事に対して積極的になり、縁がないものとあきらめていた幸運が舞い込んでくる。離婚をきっかけに人間嫌いになり、友人や隣人の誘いを断り続け、オフィスでも最低限のことしかこなさなかった男が "yes" のひと言で生まれ変わる。己を肯定する魔法の言葉は周囲もハッピーに染めてゆき、主人公が劇的に変化する過程がコミカルで楽しい。
仕事も私生活もやる気がなく家でDVD鑑賞の日々を送っていたカールは、気まぐれに参加したセミナーで「何事にも "yes" と答える」と約束させられる。その帰り、早速ホームレスの頼みを聞いてやると不思議な魅力を持ったバイクの女と出会い、その後会社でも友人との交流でも "yes" を連発していると運勢が好転していく。
バイクの女・アリソンと再会したカールは急速に彼女と接近、会社でも昇進が待っている。ところが "yes" 効果を実感するするにしたがってカールの表情はどこか曇ってくる。それは心から出た言葉ではないから。本心に嘘をついても、自分だけでなく自分を信頼している人まで傷つけると気付いたのだ。 "no" と口にすれば災厄が降りかかると信じているがゆえに仕方なく "yes" に捻じ曲げていたにすぎないカールは、そこを指摘したアリソンにも嫌われ再び無気力な生活に戻る。
ただ、カールが最初に引きこもりになった理由が離婚だけで細部とは省略され、"yes" マンになったのちも余りにもノー天気。彼の身にどれほどの悲劇が起きたのか、また "yes" の連発で経済的肉体的に相当な負担があったはずなのに、そのあたりの苦悩や困惑が描かれていないため、イマイチカールに共感できない。しかも、結局 "yes" ではなく "maybe" でアリソンと仲直りする始末。本音では "no" のことを"yes" と答えるのは言語道断だが、 "maybe" の迷いを "yes" と断言してこそ充実した人生が待っているのではないだろうか。