相棒−劇場版II−
ポイント ★★★*
監督 和泉聖治
出演 水谷豊/及川光博/六角精児/原田龍二/小西真奈美/小澤征悦/宇津井健/國村隼
ナンバー 282
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
疑問が新たな秘密を呼び、陰謀がさらなる暗闘を生む。「正義の定義は立ち位置によって変わる」の言葉通り、警察内の2つのグループが自分たちの立場と利権を守るためにそれぞれの正義を主張していく。そして、その犠牲になった末端の警察官もまた、己の正義を信じていた。警察庁と警視庁、治安を守る目的は同じでも方法論の違いから対立し、なりふり構わぬ工作に走っていく。そこにあるのは出世と保身と官僚主義。映画には、主人公たちが自らが属する「組織」にはびこる巨悪の実態をあぶりだしていく過程で次から次へと意外な展開が用意され、大勢の登場人物と濃縮されたエピソードがうまく整理された脚本の出来が素晴らしい。
警視庁内で警視総監を含む幹部12名を人質に取った籠城事件が発生する。犯人の八重樫は射殺されるが、特命係の杉下と神戸は、八重樫が7年前のテロリスト爆殺事件に関わっていたことを突き止め、独自に捜査を開始する。
いきなり貨物船での銃撃戦と爆破、八重樫による凶行、その後の特殊班の強行突入と派手なアクションで始まる。このあたりはハリウッド映画ほどの緊迫感がなく雑な印象を受けるが、早々と方向性を杉下らによる謎解きに修正したおかげでスピード感あふれるミステリーになっている。また、警視庁内で拳銃を見せたり、足音を鳴らしたりと、登場人物の不自然な行動が後になって重要な意味を持つなど伏線も張り巡らせていて一瞬も気が抜けない。さらに物語を権力志向のキャリア官僚と使い捨てにされるノンキャリ公務員の葛藤に昇華し、平和な日本における公安の存在意義を問う現代風の味付けも効いている。
◆以下 結末に触れています◆
杉下たちは7年前の事件の真相を暴き、背後にあった虚構を解明するが、結局ノンキャリアの警察官ばかりが泥をかぶる。「正義」などというものは権力者の判断一つでどのようにも捻じ曲げられ、それが警察国家、ひいては民主主義の否定につながりかねない恐ろしさを、この作品は強く暗示していた。