幼い日に見た九つ頭の龍。自分こそはその力と権威を継ぐ者と自負する男は胸に九頭龍のタトゥーを彫り、強く正しく生きると誓う。物語は、香港警察の捜査員が経験した絶望と再生を描く。連続殺人事件を追ううちに婚約者を失ってしまった。未解決のまま時間が流れるが、もはや彼は魂の抜け殻。ところが、類似事件が発生したのを機に彼は現場に復帰する。香港とマカオ、キャリアとノンキャリ、東洋とそれ以外の文化etc. さまざまな対立項を内包しながらわずかな手掛かりを元に事件の真相に迫っていく過程はほのかなユーモアすら交じる。一方、その間繰り返される格闘アクションはユニーク。特に主人公と女ダンサーが路面電車内で相まみえるシーンは、ポールダンスを応用した上下動と回転を多用して視覚的にもエキサイティングだった。
捜査上のミスで恋人を拉致されたガウは辞職するが、マカオで新たに起きた女性警官殺しで協力を求められる。ガウはマカオタワー内のスポーツジムにアタリをつけ、インストラクターのレディに接近する。
レディは元米兵の格闘家・シンクレアと共にジムを経営している。シンクレアとガウは浅からぬ因縁がある。同時に、ガウはマカオ警察に介入されたり、仲のいい女医の情報提供を受けたりする。そのあたり登場人物の人間関係は中途半端に絡み合ったまま。それでもガウは捜査を続け、シンクレアが犯人だと確信する。ただ、そこに至るまでの展開はきちんとしたプロットもなく撮影中に思いついたようなショットばかりで、いかにも香港映画らしいいい加減さだ。証拠を積み上げ謎を解き明かすなどというミステリーの定石を守るつもりはなく、とりあえずアクションを羅列することで観客の興味をつなごうとする。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そして、クライマックスはバンジー台での決闘。目がくらむ高所での素手勝負だけでなく、ジャンプ用のゴムロープを使った斬新なアイデアを期待したが、イマイチ物足りない。極めつけは九頭龍のオチ。もしかしてこの作品は、大笑いすべきコメディだったのか???
監督 フルーツ・チャン
出演 マックス・チャン/アンデウソン・シウバ/ケビン・チェン/アニー・リウ/ラム・シュー
ナンバー 65
オススメ度 ★★
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