こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生はビギナーズ

otello2012-02-09

人生はビギナーズ BEGINNERS

オススメ度 ★★
監督 マイク・ミルズ
出演 ユアン・マクレガー/クリストファー・プラマー/メラニー・ロラン
ナンバー 30
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

44年間苦楽を共にし深く愛し合っているかに思えた両親、しかしお互いに見えない壁を作りどこかよそよそしさを残していた。母の死後、ひとり息子は原因を父から聞かされる。ゲイ告白を機に、最晩年で人生の美しさを取り戻したかのように精気に溢れ日々を送るようになった父の姿を間近に見て、息子は何とか父と心を通わせる努力をする。その一方、いつまでたってもうまくいかない自分の恋に悩む主人公の中途半端な心情を、室内シーンでも照明を使わない薄暗い映像が象徴していた。

父・ハルをガンで亡くしたオリヴァーは喪失感から立ち直れないでいたが、友人にパーティに誘われ、女優のアナと知り合う。ふたりはたちまち恋に落ちるが、オリヴァーにはアナを愛していく勇気と自信がなかなか湧いてこない。

同時に、ゲイ生活をエンジョイするハルの生前のエピソードが紹介されるが、彼の恋人・友人たちは皆いい人ばかり。13歳の時に同性愛を自覚し約60年にわたる後半生の間ずっと抑圧してきた自己の本能を解放したハルの表情は青春の輝きを謳歌しているよう。引退し、そこそこカネがあるからこそ手に入った自由ではあるが、思いのままに生きる素晴らしさ、喜びも楽しさを分かち合える友がいるあたたかさを晩年のハルは教えてくれる。ところが、オリヴァーの気持ちはいつまでたっても晴れないまま。それは父の生き方を変えてしまった同性愛に対して、恐怖と言っていいほどの警戒心を抱いていたからなのか。さらに生来のネガティブ思考は決して共感できるものではなく、映画は彼の本心にまでなかなか届かない。

◆以下 結末に触れています◆

もしかして、オリヴァー自身も己の心と体の中に同性愛のし好があることに気づき驚いていて、それを忌避し否定するためにアンを始めさまざまな女遍歴を繰り返していたのだろうか。ゲイなのかストレートなのか、オリヴァーの性的アイデンティティをめぐる自分探しの道のりと解釈すれば、この煮え切らない物語も少しは理解できるのだが。。。

↓公式サイト↓