こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダンサー そして私たちは踊った

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脚を素早く交差させステップを踏む。斜めに傾いだ体を高速で回転させる。繊細さよりも力強さ、優雅さよりも激しさ、なにより奮い立つ喜怒哀楽を前面に押し出した振り付けはステージ上のアートではなく、大地と共に生きてきた人々の魂の咆哮のよう。物語は、ジョージアの舞踊団でプロを目指す若者の青春を描く。日々のレッスン後にはバイトで生計を立てなければならない。恋人はいるけれど微妙な距離感を詰められない。家族は皆怠け者で、カネをせびられる。そんな中、飛び切りうまい新顔が入ってきた。そして、オーディションが迫ってくる。最初は彼を警戒していた。だが朝練で顔を合わせるうちにライバル以上の感情が芽生え、ガールフレンドでは抱けなかった思いが抑えきれなくなる。まだ同性愛が禁忌とされている国だからこそ燃え上がる恋が切なかった。

国立舞踏団で幼少時からレッスンを受けてきたメラブは、突然スタジオに現れたイラクリのダンスに目を見張る。その後メラブはパートナーのマリをイラクリに奪われ複雑な気持ちを隠せない。

メラブの実家は貧しく、家を出た父が営む露天をメカブとマリが訪ねていく。父は国際舞台に立つほどのダンサーだったが、今はすっかり落ちぶれ「ダンサーでは食っていけない」とメラブに他の道を探すよう忠告する。父の言葉は、成功するのは数十人にひとり、さらに引退後も指導者としてこの業界に残れるのは数百人にひとりという厳しい世界の現実を象徴していた。ところがメラブはいつしかイラクリに夢中になり、千載一遇のチャンスが目の前に転がっているのに一向にレッスンに身が入らない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

若気の至りと言えばそれまでなのだが、舞踊団では同性愛は許容される雰囲気ではない。己の性的性向に気づいたメラブが、兄が起こした諍いに巻き込まれたのを機に男娼とつるんでクラブに出入りするなど破滅的な行動を取る。せっかくジョージアの伝統的舞踏をテーマにしているのだから、お決まりのボーイズラブ的展開にするよりその神髄に迫ってほしかった。

監督  レヴァン・アキン
出演  レヴァン・ゲルバヒアニ/アナ・ジャバヒシュビリ /バチ・バリシュビリ
ナンバー  33
オススメ度  ★★


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