こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モスル あるSWAT部隊の戦い

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捕虜を処刑する。重傷の敵はとどめを刺さずに放置して苦しませる。狂信者どもには一切の慈悲をかけない。物語は、ならず者組織がはびこる町で単独の救出活動を展開する特殊部隊の戦いを描く。警察官としてきちんと取り調べたかったのに、特殊部隊は容疑者をあっさり殺してしまう。成り行きで彼らに加わった若き警官は、裏切りと欺瞞に満ちた戦場で何をすべきかを学んでいく。廃墟と化した石造りの古い町並み。あらぬ方向から狙撃してくるスナイパー。巧妙に仕掛けられた爆弾。そんな場所でも市民は生活を続けなければならない。ドローンやタブレット端末といったハイテク小道具は一応出てくるが、およそ現代の戦争とは思えない緊迫した戦闘シーンの連続は、最前線での掃討作戦は結局マンパワーが頼りだと教えてくれる。

テロリスト取り調べ中にIS軍の襲撃を受けたカーワはSWAT小隊に救出される。その場で隊長からSWAT入りを命じられたカーワは、目的も教えられないまま彼らと行動を共にする。

SWAT入隊条件は、ISに家族を殺された者であること。ISは憎いが、有無を言わさず彼らに銃弾をぶち込むSWATに違和感を覚えていたカーワは、相棒の裏切りで、非情にならなければこの世界で生き残っていけないと知る。一方でSWATは正規軍の命令に背き単独で行動している。カーワはSWATの隊員たちから学び行動し自らを成長させていく。そして、果てしない憎しみの連鎖の先にあるものを探し始める。警官らしい正論を吐く青二才だったカーワが、わずか数時間で戦闘マシーンに変貌していく。その成長(?)の速さに目を見張った。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

道中、子供を救出したり、ISと交戦したり、イラン軍と交渉したりしながらSWATは目的地を目指す。隊長が指揮権を放棄するなど首をかしげたが、それは巧妙な伏線。一般市民を戦闘に巻き込むだけでなく、脱出しようとする人々を射撃の的にし、さらに女性は人身売買の対象にする。そんなISの悪行の数々をリアルに再現された映像は、イスラムの原理とはいったい何なのかを改めて考えさせられる。

監督     マシュー・マイケル・カーナハン
出演     ヘール・ダッバーシ/アダム・ベッサ/イスハーク・エリヤス/クタイバ・アブデル=ハック/アフマド・ガーネム/ムハイメン・マハブーバ/ワリード・エル=ガーシィ
ナンバー     216
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://mosul-movie.jp/