アウトレイジ ビヨンド
オススメ度 ★★★
監督 北野武
出演 ビートたけし/西田敏行/三浦友和/加瀬亮/中野英雄/松重豊/小日向文世/高橋克典/桐谷健太/新井浩文/塩見三省/中尾彬/神山繁
ナンバー 203
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
陰謀、裏切り、粛清……。誰もが腹に一物を抱え、わずかな油断で足元をすくわれる。利害が一致しているうちは“兄弟”でも、立場が危うくなるとすぐに切り捨てられるヤクザの世界。まさに寝首を掻くか掻かれるかの緊張感の中で男たちは日々命がけで鎬を削っている。そしてヤクザ同士の合従連衡を陰で操り勢力を殺ごうとする刑事。映画は「義理と人情」といった任侠道とは対極にある現代ヤクザのドロドロとした人間関係を無数の銃弾と血で再現する。逃げ場を失った男たちが虚勢の皮をはがされたときの見苦しさが、本当は肝っ玉の小さい彼らの本性をさらけ出していた。
関東最大の組織・山王会の会長に収まった加藤は知性派の石原を若頭に抜擢、組の古参幹部は不満を募らせていた。ある日、幹部の一人が現状を打破すべく、刑事の片岡の手引きで大阪の花菱会に助力を求める。そんな時、服役中だった大友が出所する。
大友はヤクザに戻る気はないが、かつて大友の子分だった石原は必死で大友を消そうとする。片岡は宿敵だった大友と木村を手打ちさせたうえ花菱会とも手を組ませる。ヤクザ同士抗争させようと絵を描く片岡、それに乗りつつも関東進出を図る花菱、巻き込まれていく大友、追い詰められる加藤と石原。それぞれの思惑が交錯し、もはや先に殺さなければ自分がやられる状況の中、男たちは抜き差しならない立場に追い込まれていく。その中で、前作ではショボいヤクザに過ぎなかった木村が驚異的な胆力を身に付け親分連中を相手に渡り合うが、彼を演じた中野英雄の鬼気迫る表情が印象的だった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
結局、組織に頼らなければ生き残れない、組織に頼り過ぎても使い捨てにされる。確固たるバックグラウンドを持つ者でさえ命の保証はない。その救いのなさがヤクザ社会の男たちの運命を象徴していた。ただ、処刑、暗殺、拷問と様々なバイオレンスが繰り広げられるが、今回は押し並べて拳銃による射殺が多く、リアルな痛みが伝わってくるアイデアは“野球”だけというなのは少し物足りなさを覚えた。