こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ペンギン夫婦の作りかた

otello2012-10-22

ペンギン夫婦の作りかた

監督 平林克理
出演 小池栄子/ワン・チュアンイー/深水元基/山城智二/田仲洋子
ナンバー 208
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

辛すぎずくどすぎず、おかずに和えてもご飯にかけても、食材の風味を損なうことなく独特の香味を鼻孔の奥に残す。中華料理店なら普通に置いてあるラー油にさまざまな具材を加えて“ラー油を食べる”発想で新たな需要を産んだ「石垣島ラー油」。それはひと組のカップルの、素朴だけれど斬新なアイデアの賜物だった……。映画は、深く信頼し合うふたりが持ち前の楽天的な性格で厳しい現実を克服し、前向きに生きる姿を描く。夫の失業を“東京から離れるチャンス”とばかりに「ラッキー」とつい口にしてしまう妻には、悩みや心配事より、明るい未来しか見ないという人生における確固たる信念がうかがえる。

歩美と中国人夫・暁江は勤務先の倒産を機に石垣島に旅行、すっかり石垣島が気にいったふたりは永住を決意する。歩美は飲食店で働くうちに石垣島の農産物だけで作るラー油を思いつき、暁江と共に開発、フリーマーケットで売ろうとする。

物語は帰化申請する暁江のために夫婦で役人の面接を受けるふたりが、回想の中でどれほどお互いを大切にし、いかにして大ヒット商品である「石垣島ラー油」が生みだしたかを再現する。査問官は偽装結婚を疑う態度を崩さず、さらにラー油製造場所を強制捜査したりと、あくまで東京から来たよそ者と中国人に対する不信感を隠さない。そのあたりの緊迫した空気と、歩美と暁江の苦労ですら楽しもうとするラブラブな日常や帰化申請に向けて想定問答を繰り返す軽妙なシーンがバランスを取る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて帰化申請が受け入れられる暁江。外国人の場合、まったく新しく名字が許されるのをはじめて知った。そして歩美の頭にひらめいたのは、日本に一つしかないと思われる名字・辺銀(ペンギン)。その名字に込められた歩美の願いが、愛があれば大抵の難題は乗り越えていけると教えてくれる。ただ、もともと原作に波乱万丈の起伏があまりないのだろう、査問官や歩美に勘違いさせてコミカルな味付けをしてアクセントをつけるが、設定がベタ過ぎて笑えなかった。。。

オススメ度 ★★

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