ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ! FIRST POSITION
監督 ベス・カーグマン
出演 アラン・ベル/ミケーラ・デ・プリンス/ジョアン・セバスチャン・ザモーラ/ミコ・フォーガティ/レベッカ・ハウスネット
ナンバー 304
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
重力を感じさせないほど軽々とジャンプし、独楽のごとく回転する少年。妖精のように優雅に舞い喜怒哀楽を表現する少女。バレエに魅せられ、ダンスこそ己の生きる道と定めた10代の若者たちはひたすらレッスンに励み、コンクールで披露する技を磨く。映画はプロバレエダンサーの登龍門に挑戦する5人の少年少女を通じて、一流の芸術家に必要な素養は何かを問うていく。もちろん柔軟でしなやか且つ丈夫な肉体、小顔と長い手足の骨格、役を理解する想像力、そうした天賦の才のほかに、向上心を持ち続ける情熱がいちばん大切であるとかつて名ダンサーだった審査員たちは言う。普通の子供たちが経験する一切を犠牲にして夢を追いかける純粋な姿がまぶしい。
米軍軍医の息子・アラン、コロンビア留学生・ジョアン、シエラレオネ難民のミケーラ、女子高生レベッカ、日米ハーフのミコ。彼らはユース・アメリカ・グランプリを目指して日夜厳しい指導を受けている。
信じられない角度に背中を曲げ股関節を開くダンサーたち。一方で彼らのつま先、足の甲、足の裏はタコ、マメ、擦り傷、痣など文字通り“血のにじむ努力”の跡がうかがえる。特にアキレス腱を痛めたミケーラはダンサー生命の危機と闘いながらも踊りを止めない。アフリカ人特有の筋肉質のボディでダイナミックなダンスを見せる褐色の彼女は、やせ形の白人が主流のバレリーナの世界に新しい風をふきこんでいる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
予選を通過した彼らはNYで行われる本選に出場する。5000人のエントリーから篩にかけられた200人、だがプロ契約や奨学金を得られるのはほんの一握りだ。カメラはそこに至るまでの本人たちの頑張りだけでなく、彼らを援助する家族の経済的負担をはじめ生活全般のサポートまで克明に追う。親から見れば莫大な先行投資である現実も興味深かった。それにしても、取り上げたダンサーたちはみな何らかの結果を出したが、その陰で涙を飲んだダンサーたちの映像もあるはず。編集したのはまだ若い彼らへの優しさなのだろうか。。。
オススメ度 ★★★