こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダンサー イン Paris

すらりと伸びた手足、可動域が広い関節、舞うようなジャンプ。スピーディなスピン。悲劇のヒロインになり切るダンサーは、その存在そのものが至高の芸術作品のようだ。冒頭のバレエシーンは、その圧倒的な身体能力が神がかって見えるほど奇跡的な美しさに満ちていた。物語は、足首を負傷したバレリーナコンテンポラリーダンスで再生する過程を描く。バレエにすべてを賭けてきたから、別の人生をやり直す勇気はない。友人に誘われモデルの仕事をしてみたが情熱は沸かない。そんな時出会った、まったく経験したことのない身体表現。重力がないかのように振る舞って天の高みを目指すバレエと、しっかりと体重を手足で支え地と格闘するようなコンテンポラリーダンス。型が決まっている前者と自由な後者の対比がヒロインの成長を促す。

休養中のエリーズは友人のサブリナに誘われアーティスト向け合宿所の料理手伝いになる。そこにやってきたダンス集団のユニークな振り付けに興味を持ち、稽古に参加する。

最初は死体の役。全身から力を抜かなければならないが、それゆえあらぬ方向に足が曲がったりする振り付けがある。それに耐えられるだけの柔軟性をエリーズは備えている。もう高く飛び跳ねる必要はなく足首への負担も少ない。たちまちその創造性の虜になったエリーズはのめりこんでいく。風の強い海岸の丘でダンサーたちが集団舞踊する姿は命の輝きと生の喜びに満ちていた。自然をふんだんに利用した画作り、その映像からは若々しさとみずみずしさがほとばしっていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

リハビリ担当のヤンが、エリーズへの施術中に泣き出して逆にマッサージされたり、インドからはるばるやってきてエリーズにコクったのにあっさりフラれたりするなど、生真面目なのに間抜けな感じがして、映像にエスプリを与えていた。また、すぐに突っかかるサブリナは恋人と頻繁に大けんかするが、直後のショットでベッドを揺らしているなど、コミカルな味わいも深かった。

監督     セドリック・クラピッシュ
出演     マリオン・バルボー/ホフェッシュ・シェクター/ ドゥニ・ポダリデス/ピオ・マルマイ/フランソワ・シビル/スエリア・ヤクーブ/メディ・バキメ/アレクシア・ジョルダーノ/ロバンソン・カサリーノ
ナンバー     172
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://www.dancerinparis.com/