こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

脳男

otello2013-02-12

脳男

監督 瀧本智行
出演 生田斗真/松雪泰子/二階堂ふみ/太田莉菜/大和田健介/染谷将太/光石研/甲本雅裕/小澤征悦/石橋蓮司/夏八木勲/江口洋介
ナンバー 34
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

高度な記憶力・判断力を持ちながら生まれつき感情がない男。喜怒哀楽すら知識として吸収し、あらゆる質問に対して決して尻尾をつかませないほど頭の回転が速い。しかも極限まで鍛え上げられた暗殺者の資質も備えている。映画はそんな主人公を精査する医師の葛藤を通じて、人間の意識とは、心とは何かを問うていく。警察さえ手が出せない世の中の悪人に制裁を加えるプログラムを入力された彼が、まるですべてを予見していたかのように行動する姿は、不気味である以上にサイボーグのごとき機能美を有する。

連続爆破猟奇殺人の容疑で逮捕された身元不明の男は、精神科医・真梨子の鑑定を受ける。真梨子は、医学的にはまったく問題がないが異常に高い知能と無痛体質を持つこの男を調べるうちに、彼の名が大威でかつて殺人マシーンとなる訓練を受けていたと知る。

一方爆破事件の首謀者である紀子は大威を奪還するために、真梨子の身辺に張り付き、調査結果を盗聴する。その過程で真梨子による大威の生い立ちの解読、紀子と大威の関係、警察の立場などが錯綜し、謎がまた新たな謎を提示していく展開はスピーディでスリリング。特に、大威がなぜ紀子たちの犯罪に加担したのかが示される場面は、もはや法を超越した存在となった大威の大いなる使命に、彼が背負った十字架がオーバーラップする。その後も拒否することを教えられていない大威は、痛みも恐怖も不安もない肉体と精神で真の悪に立ち向かっていく。報われない運命は彼の孤独をより浮き彫りにするが、それすらもともと感じていないという現実が彼の哀しい人生を象徴する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、紀子が助手一人とあれほど大掛かりな爆弾テロを起こせるものだろうか。彼女もまた卓越した頭脳派なのはわかる、だが、ひとりアメコミ悪党風のキャラで爆発物をあちこちに仕掛けまくるのは、著しくリアリティを欠いている。どうせ眉毛を剃るのなら、末期がんの設定なのだからウィッグを取るとスキンヘッドだったくらいの衝撃はほしかった。。。

オススメ度 ★★*

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