こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フローズン・グラウンド

otello2013-08-22

フローズン・グラウンド THE FROZEN GROUND

監督 スコット・ウォーカー
出演 ニコラス・ケイジ/ジョン・キューザック/バネッサ・ハジェンズ/マイケル・マグレディ/ディーン・ノリス
ナンバー 185
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

昼なお薄暗い極北の地、弱々しい太陽の光は町の片隅でひっそりと生きる人々には届かない。それでも石油目当てに様々な人が集まり、夜の街を徘徊する女たちを餌食にする変質者も密かに牙を研ぐことができる。映画は1983年にアラスカで発覚した大量殺人事件を追う。善良な市民として暮らす犯人、わずかな手がかりを元に現在と過去を結びつけていく刑事。沈んだ映像が犯人の心の闇と被害者の絶望を象徴し、邪悪なエネルギーとなって刑事に伝わっていく。まだハイテク通信機器がなかった時代、マンパワーだけを頼りに風俗街を聞き込みに回る刑事たちの息遣いがリアルだ。

手錠をはめられたまま保護された娼婦・シンディはハンセンを告発、州警察のジャックは彼女の証言を元にハンセンの身辺を洗う。身元不明死体が連続して発見された事件との関連に気づいたジャックはシンディに協力を求める。

ハンセンは前科はあるが、今では市警察も認めるほどの模範的な住民。だが、娼婦ばかりを監禁・レイプしたうえ猟銃で射殺するという残忍な裏の顔を持つ。飛行機に乗せて原野で犯行に及び死体を埋めるために、なかなか警察の手が及ばず、ジャックたちは後手後手に回る。論理的な仮説は立てられるが証拠はない、そんな状況で右往左往しているうちにハンセンの魔手は唯一の証人であるシンディに再び伸びる。そのあたりの描写はあくまで感情を抑制し、サスペンスを盛り上げるような演出はしない。ハンセンを演じたジョン・キューザックは狂気をあえて封じ込めて、人殺しが日常と化した男のダークサイドを表現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてハンセンの家からライフルが見つかり、彼は逮捕される。もちろん取り調べ中はシラを切りとおし、むしろ理路整然とした話し方は高度な知性すら感じさせる。結局何が彼を凶行に走らせたのか、動機は曖昧なまま。だからこそ余計に、普通の人間でも殺人鬼になる可能性を秘めている恐ろしさがジワリと伝わる作品だった。

オススメ度 ★★*

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