孤独な天使たち IO E TE
監督 ベルナルド・ベルトルッチ
出演 ジャコポ・オルモ・アンティノーリ/テア・ファルコ
ナンバー 43
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
口うるさい母親にうんざりしている14歳の少年は、学校でも変わり者で通っているのかカウンセリングを受けている。そんな彼が初めて母親の干渉が届かないところへ単身行こうとする。それは、普通なら大人になるための通過儀礼。ところが見知らぬ土地での出会いや未知の体験をする従来の“旅”とは違い、目的地は自宅アパートの地下室だ。映画は、ミニマルな閉鎖空間で起きる主人公の心の変化を通じて、人間の成長とは移動した距離や関わった人数ではなく、いかに濃密な時間を過ごしたかで決まると教えてくれる。やはり人は、他人を通してしか己の実在を実感できないものなのだ。
学校のスキーツアーに参加するといって出かけ、地下室にこもったロレンツォ。管理人の目を盗んで、電気・水道・トイレ・ベッドがそろった秘密の部屋に食料を持ち込み、気ままなひとり暮らしを始めるが、そこに異母姉のオリヴィアが転がり込んでくる。
しばらく顔を合わせていなかったオリヴィアは麻薬中毒になっている上、恐ろしくジコチューなアーティスト気取り。彼女はロレンツォの至福のときを浸食してはばからず、ロレンツォの不快感は募っていく。だが嘘をついているのを知られ弱みを握られたロレンツォはオリヴィアの言いなりになるしかない。多感な年ごろで大人に反抗したいだけのロレンツォにとって、オリヴィアはまったく話がかみ合わない異星人同様の存在。しかし、禁断症状が出た彼女に頼られていくうちに自分も何かの役に立てることをと知っていく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
オリヴィアのために睡眠薬を手に入れたり、母が眠っているリビングルームに忍び込んだりと、ロレンツォはオリヴィアのおかげで思わぬ冒険もする。その経験は、ひとりでいては味わえなかったスリルだ。胸にたまった悶々とした思いは内に向かうよりも外に向けるべき、たとえちっぽけな世界でも。ひとりでいるより誰かと一緒にいる方がずっといい、たとえオリヴィアのような姉でも。人生とは他者との接触の賜物であるとロレンツォは学んだに違いない。。。
オススメ度 ★★*