こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

偽りの人生 

otello2013-07-15

偽りの人生 TODOS TENEMOS UN PLAN

監督 アナ・ピーターバーグ
出演 ヴィゴ・モーテンセン/ソレダー・ビヤミル/アン ダニエル・ファネゴ/ハビエル・ゴンディーノ/ソフィア・ガラ・カスティリオーネ
ナンバー 171
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

開発から取り残された寒村で半グレ生活を送る兄。洗練された都会で医師となり裕福な暮らしを送る弟。一卵性双生児として生まれながら、勝ち組と負け組にはっきりと分かれてしまった兄弟。久しぶりに再会した二人、死期を悟った兄は弟に殺してくれと頼む。物語は、兄に成りすまし別の人生を手に入れたはずの主人公が、更なる悪状況に足を取られ破滅していく姿を描く。同じ血が流れているのに、いつの間にかできてしまった兄弟間の格差。何故弟だけが豊かさを享受できたのか、何故兄はろくでもない世界に身を落としたのか。ヴィゴ・モーテンセンの抑制のきいた演技と寡黙な映像が、この兄弟の秘められた葛藤を饒舌に語る。

リッチだが充たされぬ思いに押しつぶされそうになっていたアグスティンの元に、双子の兄・ペドロが訪ねてくる。末期がんのペドロを死なせ身分を奪ったアグスティンは故郷の村に帰るが、ペドロは殺人事件の容疑者だった。

いまだインフラが整っていない水上家屋が点在する湿地帯、そこではアグスティンをペドロと思って敵意をむき出しにする住人もいる。素性がばれないようにアグスティンは口数を少なくしているが、カンの良い人間には気づかれている。そんな中で、アグスティンはペドロの汚れた過去を甘んじて引き受ける。それはかつて自分のみが社会的恩恵を受けられたことへの呵責。おそらく彼らの両親には1人しか高等教育機関に通わせる経済的余裕はなく、ペドロには貧困から抜け出すチャンスを与えられなかったのだろう。アグスティンはペドロになりきって自らを罰しているのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてお尋ね者のアドリアンが戻り、アグスティンに新たな誘拐計画を持ちかける。さらに手伝いの若い娘・ロサを巡ってひと悶着が起きる。そこでアグスティンは人としての正義を為し、ペドロの汚名を雪いでやっと若き日の借りを返す。固い友情にも似た兄弟の愛が胸に沁みる作品だった。。。

オススメ度 ★★*

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