こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

R100

otello2013-08-15

R100

監督 松本人志
出演 大森南朋/大地真央/寺島しのぶ/片桐はいり/冨永愛/佐藤江梨子/渡辺直美/前田吟/YOU/西本晴紀/松尾スズキ/渡部篤郎
ナンバー 200
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

突然現れた女王様に回し蹴りを喰らい、握りずしを叩き潰され、噴水に沈められる男。苦痛の奥にある愉悦に思わず目を細めほおを緩める。病床の妻を心配しながら一人息子とつつましく暮らす彼にとって、唯一心が休まる瞬間だ。物語はSMクラブと特別な契約を結んだ主人公が徐々に蝕まれていく姿を描く。肉体的だけではない、精神的にも追い詰められる彼の、もう逃げ出したい、でも忘れられない、一度足を踏み入れると絶対に抜け出せない禁断の忘我をシュールな映像で再現する。既成の価値観で理解しようとしてはいけない、ただ受け入れるのみ。松本人志もついに、“考えるな、感じるんだ”の境地に達したようだ。

家具店に勤めるサラリーマン・片山は“ボンデージ”というSMクラブに入会、その日から日常生活に女王様が闖入し彼を責める。当初片山はサプライズに満足していたが、次第にエスカレートするプレイに悩まされ始める。

女王様が片山の職場を訪れ彼を鞭打ち罵倒する場面には不安を、妻が入院する病室で片山を縛りろうそくを垂らすシーンには危うさを覚え、身の危険を感じた片山が警察に相談する気まずさと困惑には脇腹をくすぐられる。さらに謎の男が警告を発したりするなど、一応ストーリーはあるが、もはや限りなく妄想に近いまったく先の読めない不条理な展開。だがそこから発散される豊穣なイマジネーションは強烈な引力を放ち、笑いと共感と未体験の興奮を味あわせてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、非接触型のSMプレイでいたぶられた片山は“ボンデージ”と全面対決に入る。そして、MとM、SとS、MとS、被虐も加虐も突き詰めれば本能を刺激する快楽であると証明されていく。それは魂の自由な解放、高らかに響き渡る「歓喜の歌」がこの作品の高邁な理想を象徴していた。この人間賛歌は多分に観念的ではある、しかし映画とはイメージの産物、時に感覚のみでとらえる必要もあることをあらためて気づかされた。

オススメ度 ★★★★*

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