こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

おしん

otello2013-08-23

おしん

監督 冨樫森
出演 濱田ここね/上戸彩/岸本加世子/井頭愛海/小林綾子/満島真之介/乃木涼介/吉村実子/ガッツ石松/稲垣吾郎/泉ピン子
ナンバー 179
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あの哀切を帯びつつも力強いテーマ曲に、TVドラマが放映された頃を思い出す。日本の経済規模が世界2位になり成長も右肩上がりだった1980年代、国民は頑張ればきっと報われると信じていた。辛抱と忍耐が美徳とされ、視聴者は辛い試練に耐えるヒロインに自分を重ね、ささやかな幸せを願っていた。20年以上に及ぶ低成長にあえぐ21世紀の今、彼女は時代の象徴としてよみがえり、死に物狂いで働いた先に違った次元が見えるはずというメッセージを発する。不景気でも、仕事は選ばなければいくらでもある、他人の倍汗をかけば収入も増える。確かに世間は大企業の論理で動いている、だが文句を言うばかりで自ら道を切り開いていこうとしない現代の若者を叱咤しているようだ。

明治40年、口減らしのために奉公に出された7歳のおしんは、早朝から夜まで女中頭にこき使われるが、決して弱音を吐かない。しかし、50銭硬貨泥棒の濡れ衣を着せられたのを機に飛び出し、雪山で行き倒れていたところを猟師の俊作に救われる。

おしんは人里離れた山小屋で俊作に読み書きを習い、充実した日々を送る。貧困から抜け出すためには教育こそが重要であると俊作は分かっているのだろう、一方で多くを知ってしまう不幸も背負っている。脱走兵である俊作が戦争の真実を語るシーンは、戦場で彼の心が肉体以上に傷つけられていたことを物語る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、大店に押しかけ奉公に入ったおしんは働き者の面目を保ち、大奥様に気に入られる。彼女から学んだ処世訓に、おしんは人生の道筋をおぼろげながらつかんだ気になる。祖母にもらった硬貨、俊作に教わった文字、大奥様にかけてもらった情け。それら人との出会いと縁がおしんの運命を変えていく。大人たちは皆、利発なおしんに未来を託している、そして彼らの期待を一身に受けて歩くおしんの姿は、希望を失わずに生きる大切さを教えてくれる。

オススメ度 ★★*

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