こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悪の法則

otello2013-10-26

悪の法則 The Councelor

監督 リドリー・スコット
出演 マイケル・ファスベンダー/ペネロペ・クルス/キャメロン・ディアス/ハビエル・バルデム/ブラッド・ピット
ナンバー 256
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ミスは許されず言い訳は通用しない。敵対行為は必ず報復される。一度足を踏み入れたら絶対に後戻り不可能な裏社会、生き延び、大金を得られるのは腹をくくった者だけ。しかし、カネに目がくらんだ男は、何度も警告されたにもかかわらず、汚れた仕事を引き受けてしまう。映画は己を過信し他人を甘く見たせいで用心を怠った主人公が、次第に追い詰められていく姿を描く。目に映る光景が一変し、視界に入る人間がみな不審者に見える。常に監視され命を狙われている不安にさいなまれ、高ぶった神経は一時も休まらない。都市伝説と本気にしなかった恐怖が徐々に彼の頭の中で実像を結んでいく過程は、真綿で首を絞められる息苦しさを覚える。

美しい恋人と結婚間近のカウンセラー(弁護士)は、実業家のライナーと組んで怪しいビジネスに手を出す。仲買人のウエストリーに覚悟を問われても聞き流していたカウンセラーだが、依頼人の息子の謀殺嫌疑でメキシコの麻薬カルテルが動きだしたと知らされる。

ウエストリーが神経質なまでに恐れるカルテル。暴力や殺人こそが彼らの日常であり、動向を察知したらすぐに行方をくらまさなければならない。実体については誰もが口を閉ざすが、その網は世界中に張り巡らされ、逃げ切るのは至難の業。捕まれば凄惨な処刑が待ち受ける。関係者が一人また一人と連絡を絶つ中で、孤立無援のカウンセラーが抱える孤独と誇大妄想がリアルな皮膚感覚で伝わってくる。運命を選択したのは自分、因果応報という言葉では生ぬるいほど大きなカルテルの触手は、死でさえ甘美な誘惑に思える悪魔の影のようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

物語の展開は非常にゆったりとしたテンポで、登場人物が発するセリフが会話の相手(=観客)の脳裏に浸透するのを待つ。そして、謎めいた教訓、誇張されたハッタリ、ちりばめられた暗喩、それらがひとつの結末に収斂されるとき、はたと気づく。真実はすべて心の中にあるのだと。。。

オススメ度 ★★★

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