こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キリングゲーム

otello2013-12-20

キリングゲーム KILLING SEASON

監督 マーク・スティーヴン・ジョンソン
出演 ジョン・トラヴォルタ/ロバート・デ・ニーロ/マイロ・ヴィンティミリア
ナンバー 278
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ふくらはぎにロープを通された男は逆さづりにされる。脚の筋肉が裂けるかと思いきや、意外に強靭な筋は激痛だけを伝えて体重を支える。一方で頬に矢の貫通創を負った男はレモンと塩で傷口を浸され、焼けつく痛みに悶絶する。勝者は敗者にどんな仕打ちをしてもかまわない前近代的な紛争を戦い生き抜いた2人の男にとって、拷問は己の中に潜むサディスト的本性を解放できる瞬間だ。相手の苦痛を弄び、自らの力を誇示する。そこには戦場で歪められた彼らの人間性が凝縮されている。映画は、ボスニア紛争で対峙した2人の兵士が、過去を清算するために再び対決する姿を追う。

国連軍のベンに処刑されかけたセルビア兵のコバッチは、戦後18年かけてベンの行方を突き止め、山奥で隠遁生活を送るベンに接触する。酒を酌み交わし意気投合したかに見えた2人だが、翌日鹿狩りに出かけると、コバッチはベンに矢を射かけてくる。

武力では負けた、だが戦士の実力では負けていないはず、そう信じ弓矢で決闘を挑むコバッチ。アクシデントに弱いファイバー製より天然素材の機能性を説き、証明する。永らく眠らせていたサバイバル能力を目覚めさせたベンも、枯れ枝で弓を作り直し、野草で傷を治療し、反撃に転じる。一撃でとどめを刺さず、お互いが相手の横暴を指摘し誤りを認めさせようとする、もはや子供のけんかのような感情論が彼らを突き動かしている。それでも誇りにかけて一歩も引くことができない男たちは、好敵手を得た喜びとアドレナリンの過剰分泌を楽しんでいるようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ベンもコバッチも圧倒的優位に立った時になぜか油断する。木片で殴られてナイフを奪われたり、運転中に後部シートから首を絞められたり。もしかして簡単に決着がついてしまっては面白くないと、わざと相手にチャンスを与えているのかと思えるほど。また、民族浄化の名のもとに残虐の限りを尽くしたセルビア兵も、ひとりの人間としては決して悪人ではなく同情の余地はあるというオチも腰が引けている感じがした。。。

オススメ度 ★★*

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