こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アーニャは、きっと来る

f:id:otello:20201201162728j:plain

少年は長閑な山間の村で羊を追い猟をするのが人生だと思っていた。だが彼の下にも戦争の足音は確実に近づいて来る。物語は、第二次大戦中ドイツ保護下の南フランス、ユダヤ人孤児の逃亡を手助けする人々を支える少年の葛藤と成長を描く。自分の知らないところで大人たちは戦っている。早く一人前になりたい少年は、少しでも役に立とうと秘密を守り彼らの手足となって働く。一方で親しくなったドイツ兵に立場を越えた感情を抱くようにもなっている。その間、ドイツ兵が強権的な支配者ではなく個人としては共感できるキャラだったり、村人にも信用できない者がいたりと、複雑な人間模様が再現される。敵味方の単純な二元論ではなく、絡み合うさまざまな思惑が緊張感を醸し出していた。

熊に襲われた愛犬を探して山に入ったジョーは、謎めいた男・ベンジャミンと出会う。ベンジャミンは村はずれの農家に住むオルガータと共にユダヤ人の子供たちを匿っていた。

ジョーは彼らのために村から食料を運ぶ役目を託される。頼まれた買い物をしているとドイツ軍伍長に声をかけられ危うくバレそうになる。ジョーの買ったものをベラベラ伍長にしゃべる食料品女店主はジョーに値上げを通告し、伍長にはどこか媚びている。ジョーはこの店で万引きするなど女店主を嫌っているし、彼女もジョーに対して売ってやっているという態度。ドイツ軍監視の下で商売をしているのだから仕方のないことかもしれないが、この女店主の立ち位置が生き残るために必死な一般市民を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、夏は山で過ごす羊飼いの習慣を利用した計画で子供たちをスペインに脱出させるジョーの家族。その過程でハラハラドキドキするようなサスペンス演出はほとんどなく、一部の犠牲者を出したものの、おおむね予定通りに運ぶ。ただ、冒頭でベンジャミンが生き別れたアーニャがどうやって村まで辿りついたかはまったく明かされない。ジョーのぬるい冒険よりもアーニャの過酷なサバイバルを知りたかった。

監督  ベン・クックソン
出演  ノア・シュナップ/トーマス・クレッチマ/フレデリック・シュミット/トーマス・レマルキス/ジャン・レノ/アンジェリカ・ヒューストン
ナンバー  209
オススメ度  ★★*


↓公式サイト↓
https://cinerack.jp/anya/