こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニシノユキヒコの恋と冒険

otello2014-02-13

ニシノユキヒコの恋と冒険

監督 井口奈己
出演 竹野内豊/尾野真千子/成海璃子/木村文乃/本田翼/麻生久美子/阿川佐和子
ナンバー 34
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“あなたは他の人とは違う”と口説きすべての女の子の欲望に応え、あらゆるタイプの女を虜にするのにいつもフラれてばかりいた男。長身で甘いマスクなのに気を使わせず、相手の気持ちにすっと入り込んだかと思うと速やかに去っていく。決して自己主張が強いわけではなくマッチョでもない、ただ一緒にいるだけで和む。物語はそんな男と、彼に関わった女たちの恋を描く。弛緩した空気が充満した長いカットは、彼と過ごしているようなまったりとした心地よさを再現しているのだろう。ところが、主人公がどんな感情を持って生きていたのかよくわからず、彼に共感できるところは少なかった。

交通事故で死んだユキヒコは幽霊になってミナミの前に現れる。誘われるままにユキヒコの葬式に出席したミナミはサユリと知り合い、ユキヒコの女性遍歴を聞かされる。

会社の上司・マナミと付き合いつつ元カノのカノコに付きまとわれたり、さらに隣室の女子2人とも微妙な関係になるユキヒコ。ユキヒコは彼女たちの心を素早く読みそっと手を差し伸べ、何事にも鷹揚にうけとめ、反論もせず、物事を深く突き詰めず彼女たちを肯定する。乱れた髪を直してもらったり、重い資料を運んでもらうなど、さりげないユキヒコの心遣いにマナミがニンマリしながらブラジャーの位置を整えリップクリームを塗り直すシーンに、女心のいじらしさがにじみ出ていた。ルックスもよくセックスもうまいらしいユキヒコは、女にとって理想的なアクセサリーなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、それ以上の価値はなく結婚を申し込んでもあっさり断られるユキヒコ。ユキヒコは女たちのラブドール、寂しい時にそばにいて癒してくれる存在でそれ以外の時間は必要とされない。幽霊になってはじめて、ナツミとの約束を果たすという自分の意志を貫いたユキヒコこそが、実はいちばん哀しい男だったのかもしれない。。。

オススメ度 ★★

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