こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

彼は秘密の女ともだち

otello2015-06-20

彼は秘密の女ともだち UNE NOUVELLE AMIE

監督 フランソワ・オゾン
出演 ロマン・デュリス/アナイス・ドゥムースティエ/ラファエル・ペルソナス/イジルド・ル・ベスコ
ナンバー 143
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

少女時代に永遠の友情を誓った親友が死んだ。だが、彼女の夫に女装趣味があると知ったヒロインは急速に“彼”との距離を縮めていく。“女と男”としてではなく、“女と女”として。ふたりだけの秘密、最初は細心に人目をはばかるが、ほどなく解放感から大胆に行動するようになる“彼”の女装がリアルかつコミカルだ。物語は、そんな彼らが“女同士”のお出かけを楽しむうちに、分かちがたい感情を抱くようになる姿を描く。男と女を巧みに使い分け、女性の優美な動きをディテール豊かに表現するロマン・デュリスの繊細な演技と、やっぱりオカマにしか見えない落差が時に笑いを誘う。セクシャルマイノリティの悲哀を嘆くのではなく、その生き方を積極的に享受する姿勢が心地よい。

クレールは、妻・ローラに先立たれひとりで赤ちゃんの世話をするダヴィッドの様子を見に行く。ところがダヴィッドはローラの服を着て授乳中、彼の本心を知ったクレールは女装時にはヴィルジニアと名乗るダヴィッドと買い物に出かける。

その後も旅行先で同性愛者のナイトクラブに出かけるうちに、男女の間では得られない安らぎを覚えるふたり。クレールは夫にばれそうになり、真実を言えず悶々とした日々を過ごす。いつしか、クレールはヴィルジニアにローラへの友情以上のものを感じ始めている。ダヴィッドもヴィルジニアとしてクレールを好きになっている。もちろんそれまでは異性愛者だった、でも今はお互いの配偶者を裏切っている。ローラを含めると性別と性的嗜好が複雑に入り組んだ四角関係、その過程でクレールとダヴィッドは自分の“心の性”に気づいていくのだ。そして、「普通の男」であるクレールの夫は置いてきぼりにされる。女のみが手に入れることができる自由がまばゆい輝きを放つ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてふたりはプラトニックを卒業しようとするが、クレールもヴィルジニアも本質はレズなのに、ヴィルジニアの体が男だからややこしくなる。それでも他人に迷惑をかけなければ生きたいように生きればいい。それが人生だとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★★

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