こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛して飲んで歌って

otello2015-02-20

愛して飲んで歌って Aimer, boire et chanter

監督 アラン・レネ
出演 サビーヌ・アゼマ/イボリット・ジラルド/カロリーヌ・シオール/ミシェル・ビュイエルモーズ/サンドリーヌ・キベルラン/アンドレ・デュソリエ
ナンバー 42
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

彼の名を聞いただけで女たちの心はときめき、男たちの胸には熱き友情がよみがえる。だが、彼は余命いくばくもない身、せめて幸せな最期を迎えられるようにと、二組の夫婦と別れた妻は、支え、見守り、細々と世話を焼く。映画はそんな影の主人公に平穏な毎日を乱される熟年男女を描く。“部活をやめた桐島”のごとく男は姿を見せない、ところが登場人物の言動が、男たちにとっても女たちにとっても彼がいかに魅力的な人物だったかを饒舌に物語る。彼が友人たちにもたらしたいっときの波瀾、しかしそれはひと匙のスパイスとなり残された男女の思い出に彩を放ったことだろう。

医師のコリンは友人のジョルジュが末期がんであると妻のカトリーヌに漏らす。カトリーヌはジャックとタマラ夫妻に伝え、元妻のモニカの耳にも入る。彼らはアマチュア演劇の代役にジョルジュを抜擢、タマラが相手役を務める。

カトリーヌはジョルジュと付き合っていた過去がある。同棲中のパートナーとすれ違うモニカはジャックの頼みでジョルジュの元に通い始める。芝居でジョルジュと恋人役を演じるタマラはいつしかジョルジュにのぼせ上がっている。距離を置いていたはずなのに、死を目前にしてジョルジュは突然彼らの日常に闖入し、女たちに再び恋の喜びを思い出させる。舞台の書き割りのようなセットで演じられる会話劇はエスプリと皮肉と少しの毒が効き、年老いてもなお異性関係にあたふたせずにはいられない人間の性をコミカルに再現する映像は、楽しんでこそ人生と高らかに謳いあげる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

公演は無事終わるが、ジョルジュは3人の女にそれぞれバカンスの誘いをかけていた事実が明らかになる。女たちは自分が選ばれたと思い込み、男たちは女たちの態度にうろたえる。ジョルジュはきっと、倦怠期のカップルたちに波風を立て、もう一度その距離感を見直してもらいたかったのだ。でも一番おいしいところを持って行ったジョルジュは、やっぱりただ者ではないな。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓