こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

神さまがくれた娘

otello2014-02-24

神さまがくれた娘 Deiva Thirumagal

監督 A・L・ビジャイ
出演 ビクラム/ベイビー・サーラー/アヌシュカー/アマラー・ポール/ナーセル
ナンバー 43
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

知的障害のシングルファザーと利発で愛らしい彼の娘、水入らずの暮らしは幸せに満ちたものだったのに、やがて娘の成長と共に彼らの仲は他者によって無理やり引き裂かれる。「アイ・アム・サム」の設定をそのままに父娘の情愛をよりベタに強調したこの作品は、過剰なほどの感情表現とセンチメンタルな音楽に彩られ、主人公の無垢な魂と娘の純真な思いが大いなるうねりとなって客席に波状攻撃を仕掛ける。欲望も打算もない、そこにあるのはただ父娘で一緒に暮らしたいという願いのみ。その、抑制を知らない押し付けがましさはむしろ潔さを感じるほど、時に抗いがたい魅力となって涙腺を刺激してくる。先が読める展開ながら細部のアイデアがコミカルで、飽きることはない。

妻を出産で亡くしたクリシュナは、チョコレート工場で働きながら男手ひとつで忘れ形見のニラーを育てている。だが、ニラーの通う小学校の理事長が、ニラーが自分の孫と知り、彼女の身柄を拘束する。

途方に暮れるクリシュナに弁護士のアヌが救いの手を差し伸べ、法廷闘争に持ち込まれる。6歳児程度の知能しかないクリシュナにニラーを育てられるかが争点になり、原告被告ともあらゆる手を尽くしてクリシュナの能力を証明しようとする。その間にクリシュナがいかにニラーを慈しみ、ニラーもまたそんな父親に無限の信頼を置いていることが描かれる。指人形で語り合い支離滅裂な架空の物語に酔うふたりだけの暮らしは貧しくても満ち足りた世界、幸せは物質的な満足からは決して得られないことを教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに被告側の辣腕弁護士の策略にはまり、アヌは手詰まりになるが、巧みに相手側の若手弁護士を引き込むなどして逆転を狙う。やっと法廷で再会が叶ったクリシュナとニラーが、直接言葉を交わすことを禁じられてもボディランゲージでお互いの気持ちを伝えあうシーンに、このふたりの分かちがたい絆が象徴されていた。こんな映画、日本で作ったらきっと酷評されるだろう。でも、インド映画というだけでなんか許してしまう。。。

オススメ度 ★★*

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