こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私は確信する

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あの男は無実。そう信じる女は、膨大な証拠を子細に検め真実に近づいていく。だが、彼女は時に弁護士の法廷戦術に影響を与えかねないところまで暴走する。物語は、失踪した妻を殺害したとして起訴された大学教授の疑惑を晴らそうとする支援者の奮闘を描く。ヒッチコック映画さながらの完全犯罪と呼ばれている。被害者の愛人は怪しい。証言台に立つ証人も嘘をついているように思える。そんな状況で、ヒロインは弁護士から提供された録音を精査し、警察も見落とした事実を掘り起こしていく。コックという専門外の仕事をしているのにまるで名探偵、推理小説のような仮説を立てる彼女の熱狂が、この作品を上質なミステリーに昇華していた。フランスでは失踪すると死体が見つからなくても殺人とみなされるのか?

一審で無罪判決を受けたジャックだったが、検察側が控訴、二審が始まる。ジャックの娘の知人・ノラは彼の汚名を雪ぐために高名な法律家・モレッティに弁護を担当してもらう。

思い立ったら即実行、これといった人物には直当たりするノラの判断力と行動力には舌を巻く。仕事と子育てをしながらも裁判にのめり込んでいくノラはモレッティの助手のような立場になり、調査を進めるうちに愛人の犯行と確信していく。だが裁判の被告人はジャックであって、モレッティはジャックの無罪を勝ち取ることにしか興味がない。事件の真相を暴きたいノラの思惑が少しずつモレッティとずれ、好パートナーに見えた2人の間にひびが入る過程は、法律の専門職と素人の思考回路の違いが興味深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ジャックの犯行を示す証拠や証言はなく、どう考えても “推定無罪” が成り立つはず。警察の初期捜査も杜撰、なんらかの政治的な意図があったのか。また、なぜ裁判が始まるまでにこれほど長い時間を要したのか。ジャックを社会的に抹殺する意図がどこかで働いていたのか。そのあたりはいまだ闇の奥。なにより、「正義」や「良心」では測り切れないほど事件に深入りするノラの動機が知りたくなった。

監督  アントワーヌ・ランボー
出演  マリナ・フォイス/オリビエ・グルメ/ローラン・リュカ/フィリップ・ウシャン/スティーブ・ティアンチュー
ナンバー  28
オススメ度  ★★★*


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