こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シークレット・チルドレン

otello2014-04-04

シークレット・チルドレン The Secret Children

監督 中島央
出演 オーガスト・コリエル/ジェイミー・ベルナデッテ/アリ・デ・ソーサ/サイモン・ソロズ/ルイ・デズセラン
ナンバー 54
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

滅びゆく運命なのは知っている、たとえ今を生き延びてもその先は明るくないことも分かっている。それでも知性と感情がある以上、最期まで精一杯命をまっとうしたい。だが、所詮は人間のコピーであり工業製品のように作られた身、立ち上がって戦うよりも息をひそめて隠れる道を選ぶ。物語はクローンが大量に生み出された社会で、政権の交代によって廃絶される立場となったクローンたちの愛と苦悩、哀しみと死を描く。外の世界には出られない、徐々に捜査の手は迫ってくる、極限の恐怖の中でクローンたちが示す個々の反応は、皮肉にも非常に“人間的”だった。

当局によるシークレット・チルドレン=クローンの拘束、処刑が行われるなか、セドリックとソフィアは数十か所あるといわれるクローンの隠れ家を運営していた。ある日、セドリックの方針に不満を持つギルが隠れ家の場所を捜査官に教えてしまう。

まだ絶望したわけではないが、もう逃げられないと覚悟も決めている。わずかな望みにすがりつこうとするが、叶うはずのない夢とあきらめてもいる。そんな、複雑な思い秘め、何とか隠遁生活を送っているクローンたちは必至で平静を保とうとしている。かつて人間から“友人”として扱われたのに、一方的に有害指定を受けた彼らの胸中を冷え切った映像が象徴し、政治や権力という大きなうねりに飲み込まれると、人間の権利を与えられていないクローンがいかに無力か、その悲しみを切ない音楽が訴える。そして“名誉人間”の地位欲しさに仲間を裏切ったギルの孤独が胸を締め付ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

体制側による“異物”の排除は、当然ナチスによるホロコーストを想起させる。ユダヤ人を助けたドイツ人がいたのと同様、クローンに手を差し伸べる人間がいる。為政者に煽られた憎悪が世の中を席巻しても、善意や良心といった理性までは完全に奪えないのだ。子孫を残せないクローンたちにも未来はあると予感させるラストが救いだった。ただ、もう少しアクションを絡ませるなど、見せ方や展開に工夫が欲しかった。。。

オススメ度 ★★*

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