こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー

otello2014-04-03

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
Captain America: The Winter Soldier

監督 アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ
出演 クリス・エバンス/スカーレット・ヨハンソン/セバスチャン・スタン/アンソニー・マッキー/コビー・スマルダース/エミリー・バンキャンプ/ロバート・レッドフォード/サミュエル・L・ジャクソン
ナンバー 77
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いわゆる“超人加工”を施されていない生身の人間。だが、驚異的な身体能力から繰り出されるしなやかでスピード豊かな蹴りや突き、どんなピンチにも動じない不屈の精神力持つ。そんな強くて美しい女戦士、ブラック・ウィドウがタイトルロールより魅力的。スカーレット・ヨハンソン扮する彼女をヒロインにした作品が近いうちに作られるに違いないと思えるほど、今や存在感はアベンジャーズの他のメンバーを圧倒している。物語は暗殺された上司の背景を調べるうちに、主人公たちが恐るべき陰謀にたどり着く過程を描く。組織というバックアップを失った彼らはアイデアと行動力で勝負するほかない。そして立ちふさがる強大な敵。手に汗握るカーチェイスと重量感あふれる銃撃戦、肉弾相打つ格闘アクションまで、危機また危機の連続に息つく暇ない。

船舶乗っ取り事件を解決したスティーブは、同僚のナターシャが上司のニックから別命令を受けていたことを知り、不信感を抱く。その後、ニックが襲撃され、ナターシャが持つUSBメモリに残された謎を追う。

あらゆる個人情報を収集・分析し犯罪予備軍をあぶりだす新システムは、テロリストと判断された者を有無を言わさず抹殺する。ビッグデータの政府機関による不正利用、まさに民主主義の根幹にかかわる問題がスティーブたちに重くのしかかる。キャプテン・アメリカが守るべきもの、それは為政者から与えられた自由などではなく、万人が思想信条や人種民族で差別されない権利のはず。ところが敵もまた「悪」を憎む点では人後に落ちない。キャプテン・アメリカを囲む複雑な人間関係と価値観が、混迷する21世紀を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

かつて命がけで戦ったドイツ軍の残党が組織に浸透している、それだけでもキャプテン・アメリカにとって己を否定された気持ちだろう。さらに戦死したはずの親友が仇敵となって復活する。善悪の彼我が曖昧になった現代、その名の通り米国の理想を体現しなければならない彼の苦悩がリアルだった。

オススメ度 ★★★*

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