レイルウェイ 運命の旅路 The Railway Man
監督 ジョナサン・テプリツキー
出演 コリン・ファース/ニコール・キッドマン/真田広之/ジェレミー・アーヴァイン/ステラン・スカルスガルド/サム・リード/石田淡朗
ナンバー 94
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
40年近い歳月が流れても癒えない心の傷。深く刻み込まれた恐怖と苦痛は鮮明な悪夢となって平穏な生活を蝕み、男は更なる苦悩に苛まれていく。第二次大戦中、日本軍の捕虜となり鉄道建設に従事した元英兵の体験を再現した映像は、まるで地獄の奴隷労働。過酷な環境を生き抜いて戦おうとする主人公は、次々と力尽きていく同胞を尻目に希望を失わないように情報を集めるが、発覚して絶望の淵に落とされる。一方で憲兵隊員は、敗戦後もしたたかに戦犯容疑から逃れている。物語はこの2人の戦争と戦後を通じ、被害者だけでなく加害者もまた後遺症を引きずっていると訴える。
収容所で受けた拷問が原因で心を閉ざしてきたエリックは、美しい妻・パティにもその闇を明かさない。ある日、元戦友が日本軍の通訳を務めていた永瀬の消息をエリックに告げ、エリックは永瀬に会いに収容所跡を訪れる。
まともな食事も与えられず骨と皮だけになった連合軍捕虜。エリックたち技術兵は部品をくすねてラジオを組み立てる。それがばれると凄惨な制裁が待っている。容赦ない尋問、ところが永瀬が命令を出しているわけではないのに英兵は通訳の永瀬が暴力の根源と思っている。彼らの気持ちが分かるから永瀬は表情を変えないのか、本来残虐なのか、当時の彼の性格は不明。CIAがタリバン兵に使って有名になった“水責め”が、この時代にもあったとは初めて知った。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そして、対等の人間として接し、エリックは永瀬の過去を聞き出す。永瀬も多くの人の死に胸を痛め、自分が一端を担ったことを悔いて贖罪の日々を送っている。憎悪や復讐は無意味、寛容と理解こそが新たな関係を生むばかり。だがその前に真実を直視しきちんと顧みるべきというこの作品の主張は、21世紀に生きる我々への大いなる未来志向のメッセージとなって語りかけてくる。ただ、パティとの出会いと結婚にあれほど時間を割く必要があるのか? ミステリアスな手法が内容とマッチしていなかった。
オススメ度 ★★*