こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エイト・ハンドレッド戦場の英雄たち

f:id:otello:20210930152738j:plain

銃声に怯え爆音に震え敵の攻撃が始まったら逃げ出してしまう。幸いにも味方と合流できても、今度は脱走兵と間違われ厳しい処分が待っている。どちらに転んでも地獄、ならば思い切った行動を取り運を天に任せるしかない。物語は、日中戦争での激戦を描く。小さな倉庫に立てこもった寄せ集め部隊、指揮官の士気は高いが現場の兵士は腰が引けている。敵は装備も充実した精鋭。ひとりまたひとりと倒されていくが、川に阻まれて撤退できない。そして対岸は電飾鮮やかな別世界、金持ちと欧米人が熾烈極まる戦闘をレジャー気分で傍観している。中国でありながら中国ではない、1930年代当時の上海の奇妙なポジションが非常に興味深かった。中国人のプライドを示すために国民党旗を死守するシーンは、共産党から検閲を受けなかったのかと余計な心配をした。

四行倉庫の守備を命じられた公称800人の中国国民党軍は、日本軍を迎え撃つ準備をする。初日は日本軍の猛攻をなんとか退けるが、捕虜が日本軍のさらし者にされ、報復に日本兵を処刑する。

その後も闘いは熾烈を極め、日本軍は水路から決死隊を送り込んできたり、国民党軍は手榴弾を抱えて自爆攻撃を仕掛けたりと、双方命を惜しまない。一方で、国民党軍の中には死の恐怖に苛まれながら銃弾から逃げ回っている者もいる。英雄なんかどこにもいない、ただ少しでも早く決着をつけようと踏ん張っているだけ。それでも、国民党兵士たちは徐々に自分たちの戦う意味を見出していく。死を覚悟して戦い抜く者、生き残る道を模索する者、故郷に思いをはせる者、立てこもった兵士たちは消耗品などではなく、彼らすべてに感情があり思い出があり愛する人がいる人間であるとこの作品は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

日本兵ステレオタイプの悪人ではない。国民党兵も祖国への思いは様々。ところが、高みの見物を決め込んでいた対岸の中国市民が物資を国民党軍に補給し始める。欧米人もそろそろ止めなければと真剣に考え始める。イデオロギーや感動を押し付けない姿勢に好感が持てた。

監督     クワン・フー
出演     ジャン・ウー/チャン・イー/ワン・チエンユエン/ホアン・チーチョン/オウ・ハオ
ナンバー     157
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://hark3.com/800/