こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ニューヨーク 冬物語

otello2014-05-20

ニューヨーク 冬物語 Winter's Tale

監督 アキバ・ゴールズマン
出演 コリン・ファレル/ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ/ラッセル・クロウ/ジェニファー・コネリー/ウィリアム・ハート/エバ・マリー・セイント/グレアム・グリーン
ナンバー 115
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

羽の生えた白馬、夜空のまたたき、雪を解かす体温。人智の及ばぬ大いなる意志のおかげで特異な体験をした主人公は、何のために生まれてきたのか、なぜ生かされているのか、答えを求めて彷徨する。やがて100年の時が過ぎ、己が誰なのかわからなくなってもなお、赤い髪の女のイメージだけは頭から離れない。物語は、両親に希望を託された孤独な男が不可解な現象で危機を脱し、不思議な邂逅に心を動かされ、人生の真実を発見するまでの長い旅を描く。自動車と馬車が混在する往来、整備されていないセントラルパーク、まだ古びていないブルックリン橋……、レトロとモダンが混沌とする1世紀前のNYのたたずまいが、精霊や魔物に存在感を与えていた。

犯罪組織のボス・パーリーに追われている泥棒のピーターは、盗みに入った屋敷で美しい娘・ベバリーに迎えられ天啓を受ける。その後パーリーの人質となったベバリーを奪還したピーターは、ベバリーの父の別荘に逃げる。

拳銃を持った自分を恐れず茶を振る舞ってくれたベバリーが、かけがえのない贈り物に思えてくるピーター。光線が織りなすきらめきのハーモニーに浮かび上がるベバリーは、この世での束の間の滞在を許された天使のようだ。一方、闘病中のベバリーにとって、体から発散する熱を受け止めてくれるピーターは、外出を禁じられた彼女を外の世界をつなぐ唯一の人間。星に導かれるようにふたりは求め合う。命を狙われている泥棒と余命わずかな令嬢の恋という、本来甘ったるいロマンスなのに、コリン・ファレル扮するピーターのいかにも“濃い”風貌が強烈な違和感を放つ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

記憶を喪失したピーターはベバリーの肖像を描き続け、彼女が何者か探している。100年前と同じ服装が現代のNYではかえってアーチスト風に見え、アイデンティティを失った彼の苦悩がより浮き彫りにされていた。そして再び出会った赤い髪の娘。ピーターは今度こそ天命をまっとうしようとする。その姿は、愛と自己犠牲が生きる意味であると訴えていた。

オススメ度 ★★*

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