こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バベルの学校

otello2014-06-07

バベルの学校 La cour de Babel

監督 ジュリー・ベルトゥチェリ
出演 ブリジット・セルボー二
ナンバー 129
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

経済的な事情で海を渡ってきた者、非人道的な扱いから逃げてきた者、才能を伸ばそうと留学してきた者、迫害を恐れて亡命してきた者……。本人と親が抱えるバックグラウンドは様々だが、フランスで暮らしていくにはきちんとしたフランス語を身に着けなければならない。映画はそんな外国人向けクラスに集まった中学生たちの日常を追う。自己主張がよしとされるお国柄、彼らは声高に己の考えを述べる。ローティーンの少年少女らしい過剰なまでの自我の発露を先生も抑制しようとはせず、むしろ当然と受け止めている。言わせるだけ言わせて間違っているところはぴしゃりと叱る。誰もが自由にモノを言える民主主義がここでは子供のころから教育現場で根付いている。空気を読むことを求められる日本の学校とは全く異なる世界だ。

パリ10区にある中学校、“適応クラス”に通う生徒たちの出身国は24にも及ぶ。各国語で“こんにちは”を披露した後、故国での最期の日の思い出を語り合う。多くは突然故郷を離れ、友人に別れを告げられなかったと悔やむ。

ほとんどの生徒が慣れない環境での不安にさいなまれている中、セネガル人の少女が強烈な印象を残す。水泳の授業で帽子を忘れプールに入れないとふて腐れ、成績が悪いと先生のせいにする。最後には黒人だから差別されていると言い出し、決して非は認めない。本国で虐待を受けてきたと被害者面をしていたが、その言葉すら誇張に思えるほど執拗に自己弁護する。時に“自由”はこんな反社会的な個性も産むが、主張する行為自体は“個人の権利”として容認するフランス社会の懐の深さを感じる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

異文化を尊重しつつも、担任の先生はフランスの精神を伝えようとする。それは血なまぐさい宗教戦争と革命の歴史を繰り返してきたこの国に息づく、人間が人間らしく生きるための理想なのだ。彼女との出会いは、生徒たちの未来に大いなる希望をもたらしたに違いない。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓