こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

映画 鈴木先生

otello2013-01-15

映画 鈴木先生

監督 河合勇人
出演 長谷川博己/臼田あさ美/土屋太鳳/風間俊介/田畑智子/斉木しげる/でんでん/富田靖子
ナンバー 10
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

教師たちはよき教師を演じ、生徒たちはよき生徒を演じる。学校という社会で皆が快適に過ごすためにはお互いへの思いやりを忘れず一定のルールを守らなければならない。主人公はそれを教えようとしているが、どこかで世の中を息苦しくしているのではと疑問を持ち続けている。物語は問題のない生徒こそきちんとした心のケアが必要と考える中学校教師の葛藤と日々の試行錯誤を描く。熱血でもなく説教臭くもない、理想論を高く掲げるほど嘘くさくなる教育の現場で、全体をより良き方向に導きながらも個を犠牲にしない矛盾を抱える彼の奮闘をカメラはクールな視点でとらえる。先生同士の人間関係が興味深い。

生徒会選挙が迫り、鈴木先生が担任を受け持つクラスからも立候補者を募る。だが、長期休養から復帰した足子先生の発案で記名投票制になったため、生徒会活動など無関心だった出水が生徒会長に立候補し、クラスは混乱する。

鈴木をはじめ数人の男性教員が小汚い喫煙ルームに集い愚痴を垂れる。壁に貼られた文言の数々が示す通り、もはや彼らは欠陥人間扱い。自分の体に害を及ぼすだけでなく他人まで不愉快にするタバコを止められない。そんな人間が先生と呼ばれる不思議が教育制度を風刺しているかのよう。一方で公園の喫煙スペースを憩いの場にしていたニート2人組はいよいよ居場所を奪われる。世の中の“フツー”からドロップアウトした者がいかに生きづらいかが身につまされる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

教師というサラリーマンが教育という仕事でより良き結果を出そうと努力する話と解釈すれば、このユニークな学園ドラマもある種の実用映画として理解はできる。教え子である小川に性的妄想を抱く姿を見せて彼もまた気高い見識を備えているわけではないと示し、それでも生徒のためには命を張る一面をみせて、彼の理想に対する熱意を伝えようとする。この作品の煮え切らなさは、教育に正解などないことの裏返しなのだろう。。。

オススメ度 ★★*

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