こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サイレント・トーキョー

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爆破予告されている場所・時間に集まる群衆。爆発なんて起きるはずはないと無邪気に信じている。警察官の言葉も届かずお祭り騒ぎはエスカレートするばかり。物語は、爆弾テロ犯と刑事の攻防を描く。犯人グループは爆発物に精通している。実働部隊は別にいる。巧妙に仕組まれた罠が一般人を巻き込み、彼らを利用して政府までも動かそうとする。動機は戦争に対する徹底した嫌悪感。クリスマスイブ、次々と起きる事件に翻弄されながらも容疑者確保に奔走する刑事と、周到に準備した計画を着実に実行に移す犯人グループの対比が鮮やかだ。平和ボケした日本人と戦争を知らないくせに戦争をできる国にしようとする総理大臣、そのどちらもが21世紀の日本を象徴していた。渋谷スクランブル交差点を完全復元したオープンセットが素晴らしい。

恵比寿で偽装爆破事件があり、犯人は総理大臣との対話を要求する。だが総理はテロリストとは交渉しないと断言。聞き込みに奔走する刑事の世田は怪しげなIT創業者に目をつけるが、証拠は何もない。

絶好のインスタ映えと自撮りする者で渋谷はごった返す。そこには将来に希望を持てない若者たちの、今を楽しまなければ損という気持ちが濃厚に反映されていた。そんな彼らが爆風に吹き飛ばされ、金属片・ガラス片に切り刻まれ、骨を砕かれ肉をえぐられる。この作品最大の見せ場である阿鼻叫喚の地獄絵図は表現に様々な工夫が見られ、爆弾テロを体感させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、何も考えずに見ている分には次々と展開が変わり退屈させないが、ちょっと考えると設定はいい加減でツッコミどころ満載。まったく意外な人物が主犯なのだが、主犯をテロに導いた理由があまりにも薄い。戦争を知っているなどと言ってもPKOで紛争地帯の地雷処理をしただけで実際に交戦経験があるわけでもなく、まして家族がその遺志を継ぐなどとは開いた口がふさがらなかった。そこには百人規模の死傷者をだす事件を起こす正当性はまったくない。もう少し丁寧な脚本を作ってほしかった。

監督  波多野貴文
出演  佐藤浩市/石田ゆり子/西島秀俊/中村倫也/広瀬アリス
ナンバー  217
オススメ度  ★★


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