こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

やさしい人

otello2014-09-05

やさしい人 Tonnerre

監督 ギョーム・ブラック
出演 バンサン・マケーニュ/ソレーヌ・リゴ/ベルナール・メネズ
ナンバー 200
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

かつては懸命に夢を追い、少しは叶った。今でも心に浮かぶ甘いフレーズを口ずさむのはやめられない。物語は人気が落ちて故郷に帰った中年ミュージシャンが20代の娘に胸をときめかせ、もう一度生きる喜びを手に入れる姿を描く。デートを重ね、唇に触れ、体を寄せ合ううちに、彼女にのめり込んでいく主人公。若さに対する羨望、そしてまだ自分も若者の端くれだという誤った思い込みを長髪のハゲ頭が象徴する。ところが、うつろいがちな女心の厳しい現実に直面し、募るのは嫉妬と焦燥ばかり。会いに行っても門前払い、迎えに行っても待ちぼうけ、メッセージは無視される。そんな、終わった恋にすがる彼の心情が切なくも滑稽だ。

パリでの生活に疲れ父の暮らす生家に戻ったマクシムは、地元紙記者・メロディにインタビューされる。その後メロディにアプローチをかけると、サッカー選手と別れた直後の彼女はあっさりとOKする。

ワイナリーで“恋人同士に見える”とおだてられたマクシムは大喜び、メロディもまんざらではなさそう。さらに珍妙なダンスを披露して彼女のハートをつかみ、失敗を恐れるあまり一歩踏み出す勇気のない彼女を励まして意外なプレゼントをする。若い男にない魅力で迫るマクシムは、冴えないオッサンでも若い娘とつきあうチャンスはあると希望を持たせてくれる。だがメロディの突然の心変わりに、マクシムの気持ちは空回りする。このあたり余裕をもって受け流せないマクシムの、いまだ大人になりきれない未熟さの悲哀はむしろ愛おしくすらある。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

マクシムの父も病床の妻を置いて駆け落ちした経験があるが、決して後悔はしていない。マクシムの記憶の中でもメロディと過ごした短い日々が永遠の輝きを放っているのだろう。だからこそ、無分別な行動をとってしまう。“いい年して”といった衒いもなく女の尻を追いかけるフランス男たちの積極性と、それを許容する社会が羨ましかった。。。

オススメ度 ★★★*

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