こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハッピー・バースデー 家族のいる時間

f:id:otello:20210118082107j:plain

まじめだが融通の利かない長男。いい年をしてまだ夢を追っている次男。精神が不安定で何年も消息を絶っていた彼らの姉。決して仲が良いわけではない三姉弟が母親の誕生日に集う。だが、楽しいはずのパーティはハプニングとトラブル続きで気が休まる時間がない。物語は、郊外の邸宅に集合した家族の愛憎を描く。もう皆中年に差し掛かっているのに、社会人として通用するのは長男だけ。それでも、母親から見れば出来の悪い娘や次男の方がいとおしい。彼らに生活力がないのは甘やかしたツケなのに、やっぱり母親は彼らの面倒を見ようとする。一方で、長男は、常識を弁えた人間なのにカネに細かく冷たい印象。それぞれが己の権利と立場を主張して譲らず、家族間でも個人が尊重される。これがフランス流の民主主義の原点なのだ。

マドレーヌ70歳の祝宴に、長女のクレールが突然帰ってくる。自分の娘をマドレーヌに預けたまま3年以上行方不明になっていた彼女は、戻るなり屋敷の相続分の20万ユーロを要求する。

アーカイブ映像のために家族のありのままを撮影するロマンは、まともな作品もない自称映画監督。借り物の知識はあるが身についていない。いまだ大麻を吸い、兄・ヴァンサンのクルマで事故を起こしても開き直って逃走する始末。この、クレールとロマン姉弟の甘ったれた生き方がいちいち鼻につくが、そんな彼らでも許してしまうのが家族の絆。クレールが、自分の娘が連れてきたボーイフレンドの肌の色に拒否反応を示すあたりも、彼女に対する嫌悪感が増すばかり。どうしてここまで自己中で無責任になれるのか。彼女だけが父親が違うのだろう。精神の病だけでは説明がつかない闇を抱えているクレールの人生が興味深かった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、マドレーヌの孫たちはまともに育ち、大いに誕生日を祝ってくれる。もう、大人たちの事情に気が付く年齢なのに、あえて無邪気に振舞っているような気の使い方を見せる。身近に反面教師のような血縁者がいると、子供はきちんと成長する見本のようだった。

監督  セドリック・カーン
出演  カトリーヌ・ドヌーブ/エマニュエル・ベルコ/ヴァンサン・マケーニュ/セドリック・カーン/ルアナ・バイラミ/レティシア・コロンバニ
ナンバー  8
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
https://happy-birthday-movie.com/