女は、口を開けば命令調。感謝もねぎらいの言葉もなく、いつも気難しい表情で他人の粗探しばかりしている。男は、自信も誇りも持てないまま中年になっているが、娘への愛情にあふれている。物語は、嗅覚に自信を無くした調香師と失業寸前の運転手の交流を描く。彼女は過去の栄光を忘れられず、現在の自分イラついている。彼は貧乏からなかなか抜けられないけれど、いつか娘と暮らしたいと願っている。まったく価値観も所属階層も違うふたりは、最初は反発しケンカもするが、お互いに相手の苦悩を知るうちに理解し合っていく。“s'il vous plait” も “merci” も言えなかった調香師が、やがて自然に他人の気持ちを慮れるようになる過程は、コミュニケーションと敬意が人間関係の第一歩であると教えてくれる。
高級アパートに住むアンヌの運転手として派遣されたギョームは、彼女の居丈高な態度に耐えられずやめる。ところが、その後アンヌから指名が入り、列車での出張に同行する。
洞窟の匂いを正確に再現するために成分を分析するアンナ。あらゆる物質の匂いの特徴を知り尽くし、どう配合すればどんな香りになるかが予想できる。ギョームはその能力に驚きつつも、交渉にはまったく不慣れな彼女の孤独も見抜き、出張先ではアンヌに変わってギャラアップを勝ち取ったりする。パーティに潜り込んだギョームがすぐにマネージャーと打ち解けるのを見たアンヌが彼をうらやむシーンは、才能が豊かすぎるがゆえに恋愛や友情とは縁遠い彼女の孤高の人生を象徴していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
アンヌはかつて高級ブランドの調香師だったことが明らかになるが、心身の不調で嗅覚に異常をきたし今は「匂いコンサルタント」のようなことをやっている。それでも、やっぱりもう一度調香師に返り咲きたいという夢を持っている。ギョームの夢は娘と住むアパートを手に入れること。やがて、ないものを補いあいながらふたりは分かちがたいパートナーになっていく。信頼し、されることこそが、生きる勇気と希望につながるとこの作品は訴えていた。
監督 グレゴリー・マーニュ
出演 エマニュエル・ドゥボス/グレゴリー・モンテル/セルジ・ロペス/ギュスタブ・ケルベン/ゼリー・リクソン/ポリーヌ・ムーレン
ナンバー 13
オススメ度 ★★★*
↓公式サイト↓
https://parfums-movie.com/